日本医師会 COVID-19有識者会議
WHO, 情報

WHO アップデート 第11報

中谷 比呂樹慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事
COI:なし
注:この記事は、有識者個人の意見です。日本医師会または日本医師会COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

(2020年7月20日寄稿)

世界の患者数増は歯止めがかからず、世界の累積感染者数の上位5ケ国は米国、ブラジル、インド、ロシア、南アフリカの順になっている。アジア地域では、対策の優等生といわれたシンガポールや香港で感染者数が大きくなっているほか、日本での感染者数の増大は大きな懸念事項となっている。医療と経済をともに回していくためには、接触者を確実に追跡してクラスターを生まないことが必須である。タイムリーな暫定指針が、WHO西太平洋地域事務局から公表されたので紹介する。今回も、WHO西太平洋地域事務局所属の邦人職員の方々のご尽力を得たので記して感謝したい。また、本部からは、クラスターを生みやすい各種大規模集会に関するガイダンス等が出されているので、併せて紹介する。

1 暫定指針 全国統合的なコンタクトトレーシング(接触者追跡)体制の構築

(Establishing integrated nationwide contact tracing systems)
 2020年7月6日

COVID-19対策は科学的なエビデンスに基づく政策判断が最重要であるが、多くの国で、有為な疫学情報が迅速に得られる理想的な状況にはない。わが国でも、FAXを用いた情報集積システムの問題点を解決するため、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS:Health Center Real-time information-sharing System on COVID-19)の導入が進められている。

WHO西太平洋地域事務局は、「ニューノーマル」の下で、厳しい公衆衛生措置を講じずに社会経済活動を復活させるためには、全国統合的な接触者追跡体制を構築する必要があるとして、この暫定指針を策定して公表した。その概要は次のとおりであるが、掲載された概念図とチェックリストも有用である。

本指針が前提とする目標

  1. ヘルスセクターを超えた他セクターとの協働により、持続可能で全国的に測定可能な強固な接触者追跡体制を構築すること
  2. 感染伝播の連鎖を適時に断ち切り、「ニューノーマル」において社会経済の秩序が最大限保たれるよう、公衆衛生措置の柔軟な調整を可能とすること
  3. コミュニティに積極的にかかわってもらうことで、追跡を促進し、認識の向上を図り、そして社会が一丸となってCOVID-19の追跡や将来の健康危機のため、住民の理解、受容、そして支援を確実なものとすること

接触者追跡の定義

①接触者の特定、②接触者の情報収集と共有、③接触者の観察とフォローアップの3段階であり、それぞれの段階で、何を、何時、誰が、誰と協力して行うか、その場合の先行事例とWPROの推薦活動をAnnex2に分かりやすく示している。

1. 全国統合的な体制とは

強固な接触者追跡調査を構築するためには、多面的なアプローチが必要であるとし、主な要素として「ガバナンス」、「マルチセクターの協働」、「コミュニティエンゲージメント」及び「リスクコミュニケーション」を挙げているが、結核やポリオなどの既存の体制があればその最大活用も進めている。ここで強調されていることは、(1)国及び地方自治体の危機対応管理の枠組みの一環とすることで、国と地方自治体の連携を強化すること、(2)地域を巻き込むこと、(3)大規模な接触者追跡を即座に行う必要が生じたときに、公衆衛生や医療に携わる人材を基本としつつも、消防団、国際・国内NGO、市民社会、健康や安全にかかわる組織やコールセンターといった人的資源の動員も考慮すべきであるが、接触者追跡の機微な問題の対応を考えておく必要があること、(4)効果的なコミュニティエンゲージメント及びリスクコミュニケーションを通じて、社会的受容を確保することなどである。

2. 統合的な接触者追跡体制を構築するための主なアクション

当該指針では、統合的な接触者追跡体制を整えるため、国、地方自治体、それぞれにおいてどういったアクションを取るべきかを示している。即ち、国は、マルチステークホルダーの関与を促進する環境を整えるべきとし、指針では15の項目を提示している。地方自治体に対しては、接触者の特定のためのシステムや対応能力を構築する、②接触者を探し、情報収集するシステムと対応能力を構築する、③接触者の観察とフォローアップのシステムと対応能力を構築することを柱とし、合計で15項目を提示している。

3. システムの質的管理

接触者追跡体制は継続的に評価し、弱点や障害となっている部分をモニターし、公衆衛生措置の判断に資する情報が確実に提供されるようにすべきである。この指針では、21項目にわたるシステムの準備状況とパフォーマンス評価指標案を提示している。例えば、システム準備については全国統合システムと地方システムが統合的に運用される率100%。パフォーマンスについては、検査陽性結果が出てから80%以上の症例で24時間以内に接触者が同定される、追跡でき隔離に至る率が90%以上、といった具合である。

本文は以下からダウンロードできる。

2 COVID-19に関連した大規模集会のリスク評価と対応チェックリトの使い方

(How to use WHO risk assessment and mitigation checklist for mass gatherings in the context of COVID-19)
 2020年7月13日

経済活動の再開に合わせて大規模集会も催されるようになってきたが、リスクを極力減らした中での対応が求められる。その為、WHO本部は、スポーツ、一般、宗教行事としての大規模集会対応のガイダンスを7月10日に公開し、13日には追加して、説明文書を公開した。

(1)WHO Mass gathering COVID-19 risk assessment tool – Sports events

Guidance for authorities and organizers of sports events planning mass gatherings during the current COVID-19 pandemic,10 July 2020

(2)WHO mass gathering COVID-19 risk assessment tool – Generic events

Guidance for authorities and event organizers planning mass gatherings during the current COVID-19 pandemic、10 July 2020

(3)WHO mass gathering COVID-19 risk assessment tool – Religious events

Guidance for authorities and event organizers planning mass gatherings during the current COVID-19 pandemic, 10 July 2020

ここでは、最後に公表された、「COVID-19に関連した大規模集会のリスク評価と対応チェックリストの使い方(How to use WHO risk assessment and mitigation checklist for mass gatherings in the context of COVID-19)2020年7月13日」を紹介する。

大規模集会の前には、感染の状況を踏まえた上で、集会の詳細(この使い方の中に収集すべき情報一覧がある)、COVID-19のリスク評価、チェックリストを用いた対策の評価を行った上で、提示するマトリックスを用いて最終決断をしなければならないとする。表記(2)の WHO mass gathering COVID-19 risk assessment tool – Generic events にエクセル形式でリスク・対策の評価を行うことが出来、項目別にYES/NOを入力すると評価点が算出される。それをマトリックスに当てはめることを提唱している。

図表

全文は以下からダウンロードできる。

3 グローバルCOVID-19臨床プラットフォーム症例報告様式

(Global COVID-19 Clinical Platform: Case Report Form )
 2020年7月13日

WHOでは匿名化した上で症例を集めているが、今般、妊婦および発症後21日以内に出産した女性を対象とした様式と、一般患者向けの様式(入院時、日報、機転:退院または死亡)が提示された。 

全文は以下からダウンロードできる。

(1)Global COVID-19 Clinical Platform: Pregnancy Case Report Form (CRF), 13 July 2020
(2)Global COVID-19 Clinical Platform: Rapid core case report form (CRF), 13 July 2020