日本医師会 COVID-19有識者会議
4.病院体制, 課題

新型コロナウイルス感染症と自治体病院

小熊 豊公益社団法人 全国自治体病院協議会 会長
COI:なし
注:この記事は、有識者個人の意見です。日本医師会または日本医師会COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。
  • 全国自治体病院協議会では、①令和2年3月24日~3月31日及び②4月13日~4月30日の期間に、867の会員病院にアンケート調査を実施した。
    • ①の時点では、対象病院は869病院、回答病院は237病院、27.3%だった。
    • ②の期間では、対象病院は867病院、回答病院は286病院、33.0%だった。
  • 4月30日までに、245病院中111病院に1,608人の陽性患者が入院し、精神科病院10病院においても、2病院6人の入院が報告された。
    • 死亡患者は27人、1.7%、退院患者は648人、40.3%だった。
    • 重症度分類では、回答が得られた117病院、1,494人の患者において、中等症が678人、45.4%、重症が138人、9.2%、併せて54.6%であり、軽症者が678例、45.4%を占めていた。
  • 3月末時点での地域の役割分担、協力体制の構築は、231病院中109病院、47.2%だったが、4月末時点でも、軽症者の入院が400床以上の病院で422名、28.2%にのぼっていた。医療者の負担軽減、感染予防、医療機能の逼迫を防止する観点からも、発症者の重症度によって地域での医療機関等の機能分担を積極的に進め、少なくとも400床以上の基幹病院では、中等症以上の患者の治療に当たるべきと考えられた。
  • PCR検査は、286病院中、自院で実施可能な病院が35病院、12.2%であり、準備中の病院が31病院、10.8%、実施予定のない病院が220病院、76.9%であった。回答病院285病院中、新型コロナウイルス感染症に罹患した職員は、新型コロナウイルス感染症患者引受け病院では17病院、受けていない病院では4病院で報告された。不顕性感染者を把握し、院内感染の発生を防ぐためには、PCR検査、迅速抗原検査の組み合わせが必要であり、入院患者、職員の全例検査を考慮すべきと思われた。
  • 感染症専属チームは、27.5%の病院でしか形成されていない。感染症対策、ECMO、人工呼吸器、PCR検査等に精通した専門性の高い医師、看護師、医療技術者の不足が指摘され、支援体制、配置方法、トレーニング体制の確立等が必要との意見が多く寄せられた。
  • 4月末時点で、PPEが不足していた病院の割合は、ガウンについては77.3%、消毒液63.3%、フェイスシールド61.9%、サージカルマスク58.7%、N95マスクは59.8%だった。
  • 財政的には、多くの病院で様々な要因から経営状況が悪化した。新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院の方が、非受け入れ病院に比べ、悪化度が大きかった。
    • 新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院では、売上が前年同月に比べ、3月で平均4千万円、4月で平均8千万円の減収だったのに対し、非受け入れ病院では、3月で3百万円、4月で2千万円の減収だった。医療体制確保のためにも、しっかりとした支援を希望する。

新型コロナウイルス感染症への自治体病院の対応

全国自治体病院協議会会員病院へのアンケート調査結果

全国自治体病院協議会の会員病院は、現在867病院である。このうち300床以上の病院は290病院、感染症指定医療機関は特定2病院、第1種32病院、第2種指定医療機関が266病院である(重複あり)。 

当協議会では、新型コロナウイルス感染症に対する会員病院の対応状況を把握するため、①令和2年3月24日~3月31日、及び②4月13日~4月30日の両期間において、アンケート調査を実施した。

①の時点では対象病院は869病院、回答病院は237病院、27.3%だった。②の期間では、対象病院は867病院、回答病院は286病院、33.0%であった。両調査における質問の内容は共通するもの、一部異なる項目があり、また、質問によって回答病院数が異なるため、数値が一定していない。新型コロナウイルス感染症を巡る様々な課題に苦悩し、混乱した状況であり、回答病院数も多くはないが、②の調査結果を中心に、一部①の結果を交えて、自治体病院の状況を報告する【表1】。

表1
調査結果の概要
 

②で回答した286病院のうち、感染症指定医療機関は特定0、第1種10病院、3.5%、第2種102病院、35.7%であった。新型インフルエンザ患者入院医療機関は130病院、45.5%、帰国者・接触者外来指定医療機関は151病院、52.8%、都道府県協力医療機関が70病院、24.5%であり、自主的に受け入れている病院は11病院、3.8%だった。新型インフルエンザ患者入院医療機関、帰国者・接触者外来指定医療機関は、300床未満の病院でも半数以上が該当したが、概ね病床規模に比例して増加した。都道府県協力医療機関については、300床未満の病院で55病院、19.2%と多かった。 

新型コロナウイルス感染症の患者数は、4月30日までに、245病院中111病院に1,608人の陽性患者が入院、精神科病院10病院にも2病院6人の入院が報告された。死亡患者は27人、1.7%、退院患者は648人、40.3%だった【表2】。 

表2
新型コロナウイルス陽性患者数(入院)
新型コロナウイルス陽性患者数(入院・累計)について、病床規模別で見ると500床以上が85.0%(34病院、849人)で最も高く、次いで400床台と300床台が73.3%(22病院、257人と22病院、189人)と続き、病床規模に比例して高くなる。
 

入院患者の重症度は、回答117病院、1,494人の患者において、中等症678人、45.4%、重症138人、9.2%、併せて54.6%であり、軽症者は678例、45.4%を占めていた【表3】

表3
重症度別の新型コロナウイルス陽性患者数(入院)
重症度別の新型コロナウイルス陽性患者数(入院)について、病床規模別で見ると重症が400床台で14.7%(36人)で最も高く、次いで500床以上が10.6%(84人)である。
 

PCR検査は、286病院中自院で実施可能な病院が35病院、12.2%であり、準備中の病院が31病院、10.8%、実施予定のない病院が220病院、76.9%であった【表4】。

表4
自院でのPCR検査の実施状況
自院でのPCR検査の実施状況について、「自院で実施している」が12.2%(35病院)である。 病床規模別で見ると「自院で実施している」「自院で準備している」ともに500床以上が最も高く、それぞれ27.3%(12病院)、25.0%(11病院)である。99床以下、100床台の中小病院でも、「自院で実施している」「自院で準備している」と回答している。
 

専属チームの有無では、78病院、27.5%に専属チームが設けられていたが、206病院、72.5%には設けられていなかった【表5】。

表5
感染疑いのある患者への診療等の対応状況(特定チームの有無)
感染疑いのある患者への診療等の対応状況(特定チームの有無)は、「専属チームあり」が27.5%(78病院)である。病床規模別で見ると200床台が44.7%(17病院)で最も高く、次いで500床以上が38.6%(17病院)だった。
 

電話・オンライン診療を実施している病院は121病院、42.6%であった【表6】。

表6
自院での電話・オンライン診療の実施状況
自院での電話・オンライン診療の実施状況(新型コロナウイルス感染防止対策による)について、「実施している」が42.6%(121病院)である。 病床規模別で見ると500床以上が59.1%(26病院)で最も高く、次いで300床台が50.0%(18病院)である。
 

新型コロナウイルス陽性患者の対応により不足する職種は、医師が80病院、28.0%、看護師が107病院、37.4%であった【表7】。

表7
新型コロナウイルス陽性患者の対応により不足している職種
新型コロナウイルス陽性患者の対応により不足している職種について、「看護師」が37.4%(107病院)で最も高く、次いで「医師」が28.0%(80病院)である。
 

物品の不足を回答したのは、ガウンについては77.3%、消毒液が63.3%、フェイスシールドが61.9%、サージカルマスクが58.7%、N95マスクは59.8%の病院だった【表8】。 

表8
不足している物品等
不足している物品等について、「ガウン」が77.3%(221病院)で最も高く、次いで「消毒液」が63.3%(181病院)だった。「その他」は、医療用エプロン、キャップ、スワブなどであった。
 

新型コロナウイルスに感染した職員がみられた病院は21病院、7.4%だった。うち17病院、81.0%が陽性患者を収容していた。罹患職員については、看護師が感染した病院は16病院、76.2%と高く、医師が感染した病院も7病院、33.3%にのぼった【表9】。

表9
新型コロナウイルス感染症に罹患した職員の状況
新型コロナウイルス感染症に罹患した職員の状況について、「いる(いた)」が7.4%(21病院)であり、職種別で見ると、看護師の罹患した病院が多かった。
 

新型コロナウイルス陽性患者の対応等を理由に、職員の離職がみられた病院は17病院、6.0%で、医師2病院、3名、看護師10病院、12名、事務職員3病院、5名、看護助手8病院、10名であった【表10】。

表10
新型コロナウイルス陽性患者の対応等を理由に離職した職員の状況
新型コロナウイルス陽性患者の対応等を理由に離職した職員の状況を、職種別で見ると「看護師」が58.8%(10病院)で最も高く、次いで「その他」で47.1%(8病院)である。
 

家族等への感染防止のため、自宅以外に宿泊していた職員は、65病院、22.9%だった【表11】。

表11
家族等への感染防止のため自宅以外で宿泊している職員の状況
家族等への感染防止のため自宅以外で宿泊している職員の状況について、「いる」が22.9%(65病院)である。 病床規模別で見ると500床以上が51.2%(22病院)で最も高く、次いで300床台が44.4%(16病院)と続き、概ね病床規模に比例して高い。
 

風評被害により、患者が減少した病院は286病院中134病院、46.9%、職員や家族への誹謗中傷を61病院、21.3%が受けていた。【表12】

表12
風評被害による影響
風評被害による影響について、「患者の減少」が46.9%(134病院)、「職員やその家族に対する誹謗中傷」が21.3%(61病院)だった。
 

財政的影響は大きい。3月分について回答のあった177病院中、91病院が陽性患者を受け入れ、平成31年同月に比べて57病院で医業収支が悪化した。なお34病院はプラスだった。全体では平均4,007万円、最高で68,710万円悪化した。4月については50病院から回答があった。陽性患者を受け入れた29病院では、前年同月に比べ27病院が悪化し、2病院はプラスだった。平均で8,118万円、最高で44,310万円悪化した。この2病院は、前年が合併を控えて、あるいは院内感染発症のため、患者制限をしていた。陽性患者の受け入れがなかった病院では、赤字幅は小さく、3月(86病院)、4月(21病院)ではそれぞれ平均値で301万円、2,129万円の低下にとどまったが、3月に比べ4月の悪化が進んでいる。4月にプラスになった7病院は、補助金の増額2病院、前年4月の収益が低下していた1病院、近隣のコロナ対応病院からの患者移動1病院、精神科病院1病院、原因不詳2病院であった【表13-15】【図1、2】

表13
収支状況
3月と4月の収支状況について、医業収支の増減を前年同月で比較したところ、陽性患者の受け入れがある病院のなかで減収した病院は、3月は62.6%、4月は93.1%で30.5ポイント増加した。一方、陽性患者の受け入れのない病院は、減収した病院が3月は54.7%、4月は66.7%で12.0ポイント増加している。概ね陽性患者数に比例して減収した病院の割合が高い傾向にあった。
 
表14
収支状況
3月と4月の収支状況(前年同月比における医業収支の増減)について、陽性患者の受け入れ病院の平均値は、3月が4,007万円減収、4月が8,118万円減収で、4月は3月と比較して4,111万円減収だった。一方、陽性患者の受け入れがない病院の平均値は、3月が301万円減収、4月が2,129万円減収で、4月は3月と比較して1,828万円減収だった。
 
表15
財政的影響について、既に影響が生じている点や今後生じる懸念
財政的影響について既に影響が生じている点や、今後生じる懸念に関し、新型コロナウイルス感染症入院患者数の階級別(入院・累計)で見ると、陽性患者数に比例して、「収益の減少」や「費用の増加」等の各項目に該当する病院の割合が高い傾向がある。
 
図1
収支状況
3月の収支状況について、医業収支の増減を前年同月で比較したところ、陽性患者の受け入れがある病院(91病院)のうち減収した病院が62.6%(57病院)、陽性患者の受け入れがない病院(86病院)のうち減収した病院が54.7%(47病院)だった。
 
図2
収支状況
4月の収支状況について、医業収支の増減を前年同月で比較したところ、陽性患者の受け入れがある病院(29病院)のうち、減収した病院が93.1%(27病院)、陽性患者の受け入れがない病院(21病院)のうち減収した病院が66.7%(14病院)である。
 

職員に特殊勤務手当(危険手当等)の増額を施行した病院は、262病院中47病院、17.9%、検討中が139病院、53.1%であった【表16】。

表16
職員への特殊勤務手当(危険手当等)
職員への特殊勤務手当について、「ある」が62.7%(178病院)である。手当の増額を「実施済」が17.9%(47病院)、「検討している(手当の実施を含む)」が53.1%(139病院)だった。陽性患者への接触者と非接触者で手当額を分けている病院や、緊急事態宣言の期間のみ増額している病院もあった。
 

職員へのメンタルケアを実施している病院は、280病院中89病院、31.8%であった【表17】。

表17
職員のメンタルケアの実施状況 ※主に新型コロナウイルス陽性患者への対応として
職員のメンタルケアの実施状況について、「実施している」が31.8%(89病院)である。 病床規模別で見ると500床以上が67.4%(29病院)で最も高く、次いで300床台が52.8%(19病院)と続き、概ね病床規模に比例して高かった。
 

院内保育所は56.8%に設置され、医療提供体制維持のために特別な対応をしたのは17.2%だった(①結果、【表18】)。

表18
院内保育所の設置状況
院内保育の設置状況について、「あり」が134病院(56.8%)、そのうち医療提供体制維持のために特別の対応をしたのは23病院(17.2%)である。
 

地域での役割分担や協力体制が出来ているのは、231病院中109病院、47.2%であった(①結果、【表19】)。

表19
地域での役割分担や協力体制
地域での役割分担や協力体制について、「できている」が109病院(47.2%)だった。
 

考察

867病院中、回答があったのは286病院、33.0%だった。自治体病院に入院した患者の45.4%が中等症患者、9.2%が重症者であり、400床以上の基幹病院を中心に、治療に当たっていることが判明した。3月末時点での地域の役割分担、協力体制の構築は、231病院中109病院、47.2%だったが、4月末時点でも軽症者の入院が300 症以上の病院で536名、35.9%、400床以上の病院で422名、28.2%にのぼっており、医療者の負担軽減、感染予防、医療機能の逼迫を防止する観点からも、発症者の重症度によって地域での医療機関等の機能分担を積極的に進め、少なくとも400床以上の基幹病院では、中等症以上の患者の治療に当たるべきものと考えられた。中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者の入院治療を優先的に担当する病院と、一般患者の救急、入院治療等に当たる病院を分離する提言がなされている。地域ごとの事情によって状況は異なるであろうし、実施に当たっては様々な条件、支援体制が必要になると思われるが、地域での協議のうえで必要な場合は、自治体病院はこうした提言にのっとり、中等症以上の患者治療に優先して当たるべきと考えている。

PCR検査は、自院で施行可能な病院が12.2%で、今後導入を考慮中は10.8%であった。高額な検査機器、施設環境基準や検査技師の人員配置、技量トレーニングなどが原因となり、配備が進まないとの声が寄せられた。迅速抗原検査が保険適用されたが、100コピー/テストの検体に対して、PCR法との陽性一致率は83%と言われている1)。回答病院285病院では、新型コロナウイルス感染症患者を受けている病院の17病院、受けていない病院の4病院に、新型コロナウイルス感染症罹患職員がみられた。不顕性感染者を把握し、院内感染の発生を防ぐためには、迅速で信頼性のある検査法の開発が必要と思われるが、当分はPCR検査、迅速抗原検査の組み合わせが必要である。一度院内感染が起きると、病院機能が大きく損なわれることから、入院患者、職員の全例検査を対応策として考慮すべきと思われる。診療報酬等での対応が必要であろう。

感染防護具の不足の中、感染のリスクを負いながら精神的・肉体的負担に耐え、懸命に治療に当たってきたことが国民から評価される一方、職員自身や家族への誹謗中傷が21.3%にもみられ、モチベーションの低下を招く。また自宅に帰らず勤務に当たる職員が22.9%の病院でみられ、国、都道府県の支援が必要である。

感染防護具の不足、PCR検査の不足は4月末でもなお続いており、国の対応も徐々に進んできているが、一層の改善を強く望みたい。災害時、感染症有事の医療に必要な物品の国内生産体制、ストック体制の確立が求められる。

感染症専属チームは、27.5%の病院でしか形成されていない。感染症対策、ECMO、人工呼吸器、PCR検査等に精通した専門性の高い医師、看護師、医療技術者の不足が指摘され、支援体制、配置方法、トレーニング体制の確立等が必要との意見が自由記載欄に多く寄せられた。感染症病床等についても、平時は使用される機会が少ないことから、非効率的と言われたりしてきたが、平時と非常時の医療は別であり、非常時の医療体制の確保の重要性が改めて認識された。

財政的には、多くの病院で様々な要因から経営の悪化がみられた。新型コロナウイルス感染症患者受け入れ病院では、4月の1ヵ月間をみると、前年に患者制限をしていた2病院を除き、全病院での収支が悪化していた。悪化度も非受け入れ病院に比べ大きい。また3月より4月の方が、経営上的の影響が進んでいる。国の支援も第2次補正予算でさらに行われると聞くが、医療体制確保のためにもしっかりとした対応を望みたい。

[引用文献]
  1. 診療の手引き検討委員会・作成班:新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第2版、令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進事業 一類感染症等の患者発生時に備えた臨床的対応に関する研究、2020.5.18、p1-32.