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「コロナ禍からの脱出」のための知の構造化Ⅱ

著者

COI

注:この記事は、有識者個人の意見です。COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。
  • 前報から1年余り、欧米は前回と変わらないが、南米が深刻な状況になってきているのが、この1年間の大きな変化である。
  • 致死率に関しては、医療・社会崩壊が起こらなければ致死率は2%以下という結論は変わらない。日本が、アジア各国の中で、感染抑制に関して中程度やや下位にあるという状況も前回同様である。
  • 自殺数は前報以降、急激に増加した。うつ病の増加は、早くから報じられており、コロナ禍は、うつから自殺まで、人々の心への影響が甚大であることが分かる。
  • Covid-19に関しては、世界の科学者が猛烈な勢いで知見を収集蓄積している。
  • ランセットは2020年1月、無症状感染者は感染源になることを報告している。2020年6月ネイチャーは、無症状者の方が有症状者よりもはるかに多いこと、感染爆発阻止のために、検査の精度より検査の頻度を高めることが重要であると、対策に直結する勧告を行っている。
  • 例えばコーネル大学は2020年の前半に9月に始まる新学期は対面で行うことを目的として、そのための方策を練った。ネイチャーが「検査は精度より頻度だ」と報告したその時期に、それを実行しているのである。PCRの偽陽性の議論が今も行われている日本の現状とどちらを良しとすべきなのだろうか。
  • 対面授業にこそ価値があるのだという哲学を背景に、科学的知見やPCRなど技術の進歩をリアルタイムで取り込んでこうした結論を導き、キャンパスに適用することで、世の中を先導する、それは一流の大学に、おそらくそれのみに可能なのではないかと思うのである。

はじめに

昨年5月本サイトに、「コロナ禍からの脱出」のための知の構造化、と題して寄稿させていただいた。それから1年余り、オリパラ2020を前にして、ワクチン接種を急ぐ中での寄稿となる。前報の後に明らかにされた事項を中心に、改めて知の構造化を試みる。そして、現在までの日本の対応について振り返り、今後の対応方針について述べたい。

2021年6月時点のコロナ禍

2020年5月寄稿の概要

前報では、感染率・死亡率などコロナ禍の深刻なのは欧米であること、致死率は国により0.05%~16%と広く分布するが、10%を超えるといった致死率は医療・社会崩壊のためであり、本質的致死率は低いこと、日本は感染検査PCRがあまりに少なすぎること、医療資源は先進国の中でも優位にあること、などを明らかにした。

そのうえで日本は、

  1.  PCR検査の強化、
  2.  資源を医療・介護施設などに集中、
  3.  長期戦に備えてロジスティックスを強化、そのうえで、
  4.  社会の再開を急ぐべき

と結論した。

コロナ禍の現況

南米が深刻化

【表1】は、2021年6月24日における、世界各国の、人口100万人あたりの、死亡者数、致死率(%)、感染者数、PCR数を示す。左表は、アジア、オセアニア、中東の国々、右表は、ヨーロッパ、北米、南米の国々である。国名は、死亡者数の少ない国から順に並べている。

【表2】は、2020年6月1日、つまりほぼ1年前、前報寄稿時の同様の数値である。

【表1】【表2】を概観すると、左表と右表で、死亡者数が一桁異なる。欧米・南米が多い。欧米が多い点は前回と変わらないが、南米が深刻な状況になってきているのが、この1年間の大きな変化である。

細部に注目すると、仏独伊に周辺を囲まれているスイス、オーストリア、スロベニアの3国は、前報の段階では抑制に成功していたが、現在は仏独伊とほぼ同様のコロナ禍に至った。

また、1年前はスペインに隣接するポルトガルの被害が小さく、このことがBCG接種との関連を主張する根拠の一つとされることもあったが、現在は全く差がみられなくなっている。

表1
百万人当たりの死亡者数・感染者数・検査数と致死率 (2021/6/24現在)
注.有効数字2桁までを表示
出典:https://www.worldometers.info/coronavirus/より作成

表2
百万人当たりの死亡者数・感染者数・検査数と致死率 (2020/6/1現在)
注.有効数字2桁までを表示
出典:https://www.worldometers.info/coronavirus/より作成

 

致死率

致死率に関しては、現在10%に近い値は、表中ではメキシコ、ペルーのみであり、他には4%を超える国はない。前報時点で8~16%に達していたベルギー、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、カナダなど、いずれも3%以下に収斂している。シンガポール、UAE、カタールなどは、1%を大きく下回り、前回と同様の状況である。つまり、医療・社会崩壊が起こらなければ致死率は2%以下という結論は変わらない。

【図1】は、年齢と致死率の関係であり、年代上昇とともに致死率は上昇し、日本では死者の95%を60歳以上が占める。シンガポール、UAEなどは、感染者の多くが海外からの労働者であり、かれらが若いことが低い致死率の原因であるのだろう。

このように、致死率は、年齢分布、医療状況によって大きな影響を受け、これらを考慮すれば概略は理解できる。人種などの影響は、あったとしてもこのレベルの議論に影響を与えるほどではないだろう。

図1
日本の年代別感染者/死者と致死率(2021/6/16現在)
出典:厚生労働省資料より作成

 

日本

日本が、アジア各国の中で、感染抑制に関して中程度やや下位にあるという状況も前回同様である。オセアニア、中東などを加えた中でも同様の位置づけである。

ワクチン接種によりイスラエルが収束、英米が続き、EUが追う

【図2】は、特徴ある9か国の日々の新規感染者数、死亡者数、ワクチン接種率を示す。

イスラエルは世界で最も早く、2020年12月半ばから、最も迅速に接種を進めた。3か月後の3月半ばには、2回接種が50%を超え、コロナ禍の収束が明らかになり、現在は、新規死亡者はゼロないし数人以下となっている。

英米がイスラエルに続き、欧州先進国が追随するという状況にある。日本がワクチン接種に遅れたのは衆知である。英国などで、収束したとみられた後に感染が再拡大し、インド変異株の影響とされている。ただ、死者数の増加には、少なくも現在はまだ結びついていない。

図2
感染/死亡者数、ワクチン接種割合 (2021/6/17現在)
注.棒グラフ:新規感染率(左軸、人/百万人)、折れ線(赤ー):新規死亡率(右軸、人/百万人)、折れ線:橙ー少なくとも1回、緑ー2回接種した人の割合(右軸、%)、中国ワクチン使用国:枠を付した
出典:Worldometer、ourworldindataより作成

 

中国製ワクチン?

チリ、プラジルは接種率と比して感染者・死亡者の低下が顕著でない。両国とも中国シノバック製ワクチンである。【図3】は、中国製ワクチン接種国の状況を示す。ハンガリーで低下している以外、明確な効果を見ることができない。【表1】に見るように、ハンガリーは極端に大きな死亡率の特殊な国であり、低下の原因がワクチン効果か否か検討する必要がある。

後述する合原の【式(1)】により、ワクチンの効果は感染可能な人を隔離することで表現できる。ファイザー・モデルナなどが有効率95%、中国製が50%であるとする報告があり、隔離効果は2倍近い差があることになるが、図に見られる差はそこから予想されるよりも大きいように思われる。その他、接種が貧困層を含めて平均的におこなわれているのか、重症化に対する効果はどうなのか、といったより詳細な検討がなされる必要がある。

図3
中国ワクチン接種国 (2021/6/17現在)
注.棒グラフ:新規感染率(左軸、人/百万人)、折れ線(赤ー):新規死亡率(右軸、人/百万人)、折れ線:橙ー少なくとも1回、緑ー2回接種した人の割合(右軸、%)、中国ワクチン使用国:枠を付した
出典:Worldometer、ourworldindataより作成

 

経済減速

【図4】は、GDP、すなわち経済に対する影響で、各国とも大きな影響を被った。日本は、感染者・死亡者数を考慮すると、一けた以上被害の大きい欧米各国に近い経済損失を被った。

図4
Economy suffered as much as other countries
出典:Bloombergより三菱総合研究所作成

 

自殺の増加

【図5】は、自殺数である。ここ10年以上日本の自殺者の数は、安定的に減少していた。2020年5月、すなわち前報以降、急激に自殺者が増加した。2020年5月から2021年5月までの増加数は3700人、この間のコロナ死者12,537人のほぼ30%である。

うつ病の増加は、早くから報じられており、うつ状態の人は2020年に日本で7.9%から17.3%へ増加、他の国でも米国で6.6%から23.5%、英国で9.7%から19.2%へ増加するなど、大きな影響が報じられている[1]。

コロナ禍は、うつから自殺まで、人々の心への影響が甚大であることが分かる。緊急事態宣言実施の是非を論じるとき、コロナ抑制か経済かといった論点でなされることが多いが、コロナか、社会すなわち人間かという問題なのである。

図5
2020年5月以降、自殺者増加傾向が明確に
注.同期間の新型コロナによる死者数は12,537人。点線はコロナ禍前(~2019年)までの近似直線
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/202105-sokuhou.pdf

 

格差の顕在化

【図6】は、米国における人種の影響で、感染者、死亡者を、白人に対する比率として表す。1であれば、人種によらず影響が等しいことを示す。アジア系を除き、インディアン、黒人、ヒスパニックすべて白人よりも大きな影響を受けている。これは経済状態に代表される格差がコロナ禍で顕在化した結果と考えてよいだろう。

図6
白人に対する感染者・死者の比率(米国)(2021年6月17日時点)
出典:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/covid-data/investigations-discovery/hospitalization-death-by-race-ethnicity.html

 

人種の影響

【図6】で、アジア系は、ほぼ白人と同等という結果である。【表1】では、アジアの国の感染・死亡は欧米南米各国より一けた少ない。しかし、アイスランド、ニュージーランドなど白人中心の国でも抑制されている。アメリカでのアジア人の格差についての分析が重要だが、【表1】で明らかな国家間の差、つまり、アジアでコロナ禍が一けた少ないことの理由は、DNAの差などよりも、人の往来、生活習慣など、社会環境の影響が支配的であると考えるべきなのであろう。

 

対応策

重要な科学的知見

Covid-19に関しては、世界の科学者が猛烈な勢いで知見を収集蓄積している。その中には、対策と直結する重要なものも多い。中でも、ランセットはすでに2020年1月、無症状感染者は感染源になること、感染させる確率は有症状者の26%、と報告している[2]。

2020年6月ネイチャーは特集を組み、査読の終わらない論文までを含めて速報している。その中では、感染者のうちで、無症状者の方が有症状者よりもはるかに多いことを指摘している。また、医療目的ではなく感染爆発阻止のために、検査の精度より検査の頻度を高めることが重要であると、対策に直結する勧告を行っている[3]。

無症状の感染者が多数いることはその後も確認され、日本でも、内閣官房調査[4]のデータに基づく推計を全国に敷衍できるとすれば、感染者の8割は無症状と考えられる。

実効再生産数の式:合原モデル

感染伝播で最も標準的なモデルはSEIRと呼ばれる。Sは感染する可能性がある人数、Eは感染者のうち潜伏期にある人数、Iは感染者のうち他人にうつす能力のある人数、Rは回復あるいは死亡した数である。合原は、Covid-19に特徴的な特性をSEIRモデルに加えて分析を行っている[5]。すなわち、感染者のうちで無症状無自覚な人が存在すること、これらの人も他人に感染させることを考慮した。この解析によれば、感染拡大あるいは沈静化を表現する指標である実効再生産数は次のようにあらわされる。

 実効再生産数=
 (1-有効ワクチン接種率)×(1-検査による隔離率)×(感染率)×(感染に関与する人口)  

式(1)

本式は4つの対策効果の掛け算になるという点が肝要である。すなわち、他の項が同じで一つの項が〇%になれば、実効再生産数は〇%になる。同時に、他の項が△%になれば、〇×△%になる。また、有効なワクチンを全員が接種すれば、残りに関係なく実効再生産数はゼロになり、コロナは直ちに終了する。おなじように、検査を全員に行って感染者を隔離すればゼロになる。マスク、三密回避、ディスタンスなどで接触時の感染率をゼロにできれば、最後の項は、ロックダウンなどで全員籠れば、ゼロになる。といったことを示している。

合原の【式(1)】は、直観と一致し、そのことを数学的に証明したことの意義は大きい。ワクチン接種、PCRによる無症状者の隔離、マスク・ディスタンスによる感染防止、自粛、これらの効果は足し算ではなく、掛け算で効果を発揮するのだ。日本は現在まで、ほとんど3、4項という国民の真面目さと衛生感覚のみに依存しているのである。

イスラエルは第一項ワクチンによって実効再生産数が1をはるかに下回ったため、3,4項をもとに戻す、すなわち社会を開放してもコロナ禍は収束した。

日本のこれまでの経緯:避けられた第二、三、四波

日本は、【表1】【表2】で明らかなようにPCRが極端に少ない。それは、無症状者がほとんど野放し状態にあることを意味する。感染者の8割が無症状で、無症状者も感染力がある。現状はマスクをしても、人流を減らしても、野放しの無症状感染者による感染を収束させることができないということであろう。

これまで緊急事態宣言や蔓延防止法などによる社会活動の抑制と、小規模開放を繰り返した。その間、実効再生産数は、おおむね0.5から1.5の間を行き来し、第一波、第二波、第三波、第四波と繰り返している。もし、検査による無症状者の隔離によって、2項を半分に減らすことができれば、実効再生産数は0.5×0.5=0.25から1.5×0.5=0.75までの範囲となり、第2波すら避けられたのである。

すなわち、マスク等感染率(3項)と自粛(4項)という、古典的手法のみに依存し、科学的思考と実行がほとんどできていなかった、というのが残念な実態である。今ワクチン接種を強力に進めているのはもちろん正しい。一方、PCRを拡大すべしという指摘はなされていたが、まったくと言ってよいほど実行されなかった。

今からでも、PCR検査による無症状感染者の隔離をワクチンとともに用いれば、早期にコロナ禍が終了するのである。

医療資源の有効利用

医療資源が優位であるにも関わらず、医療の逼迫が報じられている。この件に関しては、コロナ医療体制研究会[6]において詳細に検討され、提言として公表されている。我が国の医療資源は不足していたのではなくミスマッチが起きていたのであり、医療機関の機能分化と連携が重要である。さらに、コロナ対応医療機関は風評被害にあって収益が激減したため、多くの医療機関が経営判断としてコロナ対応への参加に躊躇したと言われる。診療報酬を含め医療機関の報酬体系を抜本的に見直す必要がある。

必要なのは科学的思考の普及

日本の対策が、マスク、三密回避、人流抑制、そして出遅れたがワクチンと、伝統的で分かりやすい方策にのみ依存した理由を明らかにする必要がある。細部の具体的な検討をしなければならないのだが、大きくくくれば、

  • 第一は、政府行政の科学的思考力の欠如だろう。
  • 第二は、議論の風土。様々な視点から自由に議論し、最後には結論を出さなければならないのだが、それができなかった。

この2点が、世界ですさまじい速度で生まれる知見を、リアルタイムで、収集・解析・議論・結論・実行することができず、他の国で成功した対応を導入することに遅れ、合理的な実行よりも、既得権の過剰な強さ、リスクをとらないといった体質に結び付いているように感じる。前報でも述べたように、日本が不得意な総括をしなければならない。「もう終わったことなんだから、皆善意でやったんだから、いまさら蒸し返すことはないじゃないか」となっては、いつまでたっても繰り返す。

いったい、どこが、誰がこうした状況を打破できるのだろうか。それが日本でイノベーションを実現するということだろう。筆者は、大学にその可能性を期待している。そしてそれを実践した大学は、世界には少なくないのだ。【表3】は、欧米の大学で早期に、授業を対面に戻した例を列挙したものである。

コーネル大学の例

筆者があるべき姿を見るのは、例えばコーネル大学である。2020年の前半に9月に始まる新学期は対面で行うことを目的として、そのための方策を練った。背景にあるのは、学生にとって、オンライン講義は補完的であり、大学の本質は、友人と一緒に、生の教員から受ける対面授業でなければならないという確信である。コーネルの場合、主導したのは学長で、そのもとに医学、工学、社会学、倫理学等々まさに学際的な議論を行った。学生が校内に入る時と入らないときとで、感染状況はどうなるか。オンラインにしたとき授業料返還要求はどれくらい出るか、訴訟は? といった様々な観点から検討を行った。そして、Peter Frazier准教授が中心となってシミュレーションを行った。

学内でPCRをどのくらい行うか、オンラインの場合に家から町に出た学生が感染する可能性などシミュレーションした結果、学生は一人毎週2回PCRを行い、授業を対面で行うのが、感染防止、コストのいずれの観点からも最適という結論を出した。

前述のように、ネイチャーが2020年6月に「検査は精度より頻度だ」と報告したその時期に、こうした結論を導き、それを実行しているのである。PCRの偽陽性の議論が今も行われている日本の現状とどちらを良しとすべきなのだろうか。

【表3】に見るように、各大学やり方はそれぞれである。しかし、対面授業にこそ価値があるのだという哲学を背景に、科学的知見やPCRなど技術の進歩をリアルタイムで取り込んでこうした結論を導き、キャンパスに適用することで、世の中を先導する、それは一流の大学に、おそらくそれのみに可能なのではないかと思うのである。

表3
海外の大学におけるキャンパス再開方針と検査等の内容
出典:各大学HP情報より作成

 

大学の奮起に期待する

【図7】はハリセンボンという魚のはく製である。筆者にはこれがまさに知の構造を表すように見える。針は専門知、魚の胴体が常識あるいは現状技術である。専門内で議論される先端的専門知を知るのは、専門家のみである。日本の学術会議に登録されている学会の数は2000を超える。この知の構造を鑑みれば、「専門家の意見を聞いて決める」という政府の常套句の意味に疑問を感じるだろう。意見を聞くべき専門家とは、いったいどこにいる何の専門家なのだろう。そして、もし幅広い知見の収集がなされたとすれば、どのような議論を経て、結論に至ったのだろう。2時間の委員会の背後には、合理的で膨大な作業が不可欠なのである。そのプロセスが公開されなければならない。

図7
知の構造
10MTV:https://10mtv.jp/covid-19/
写真出典:ウィキペディア
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Poisson-lune.jpg

コロナ禍が始まって以降、多くのイノベーションが起こった。たとえば、早くても3年後と言われたワクチンが1年で市場に出回った。コロナのような状況になれば、世界中から多くの人々が必死になって解決策を求めて疾走する。その中には、うまく針の何本かを結び付けて成功に至る人が出るのだ。mRNAワクチンと治験迅速化と大量生産技術などを結び付けて成功したのが、ファイザーやモデルナだ。世界にアンテナを張り、成功しそうな候補に目をつけて、早期に購入するのがなすべき戦略だ。

PCRも進化した。偽陽性も、新しい試薬の開発できわめてわずかになっている。綿棒で鼻の奥をこすられる必要もなくなった。筆者は濃厚接触者に近い状態にあった時に、すでに保健所は手いっぱいだったのだろう、検査すらしてもらえない。私立の医院でやってもらったが、唾液を30cc採取せよと言われた。一分1ccが私の限界であり、お医者さんが15ccで勘弁してくれた。4万円払い、翌日に結果が出た。しかし、2週間ほど後に会った友人は1.5ccで8千円、当日結果が出たそうだ。現在、2千円を割ったと聞いている。それくらいの速度で進化するのは不思議でも何でもない。ハリセンボンの原理ということだろう。専門家と言っても、この変化に追随しなければすぐに化石化してしまう。

イノベーションは知の結合だとシュンペーターは言う。ワクチンもPCRもあっという間にイノベーションが起きた。イノベーションを社会で実践するのも、イノベーションの一部だ。大学はキャンパスという社会を持っている。そうしたことを鑑みるに、日本のイノベーションを先導することができるのは、ビジョンと気迫と経営力をもった大学なのではないか。そういう大学が日本に現れてほしいと、切に願う。

[引用文献]
  1. Tackling the mental health impact of the COVID-19 crisis: An integrated, whole-of-society response(OECD)
  2. Infectivity of asymptomatic versus symptomaticcOVID-19 Published: December 18, 2020 https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)32651-9/fulltext
  3. Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 7、原文:Nature (2020-05-22) https://www.nature.com/articles/d41586-020-00502-w
  4. 永井良三 他:唾液PCRによる一般人口のCOVID-19モニタリング検査の意義 https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/6570
  5. 合原一幸 他:INFERRING KEY EPIDEMIOLOGICAL PARAMETERS AND TRANSMISSION DYNAMICS OF COVID-19 BASED ON A MODIFIED SEIR MODEL
  6. コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会提言 https://cigs.canon/article/20210416_5730.html

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