日本医師会 COVID-19有識者会議

新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド

高山 義浩沖縄県立中部病院 感染症内科・地域ケア科 副部長
岡部 信彦川崎市健康安全研究所 所長
山口 泰鎌倉市医師会 会長
羽鳥 裕日本医師会常任理事 本ガイド担当

ガイドの理念

  1. 診療所などの外来医が、無理なく新型コロナ感染症に対応できること  
  2. 市民の皆さんが安心して普段の外来診療を受けられること
  3. 医療関係者の多くが無事に流行期を乗り切れること   
    編集注:こちらの内容は 新型コロナウイルス感染症外来診療ガイド(第1版)【日本医師会】をブラウザー、スマートフォンでも読みやすくなるように編集したものです。正規版は上記のリンクのpdfをご確認くださいませ。

1.新型コロナウイルス感染症の概要

A 感染経路

  • 野生動物が感染源として推測され、武漢市内で動物からヒト、ヒトからヒトへの感染が広がった。感染している人の咳や会話によって生じる「しぶき」を吸入したり(飛沫感染)、ウイルスが含まれる喀痰や唾液などに接触した手で口や鼻、目を触ったり(接触感染)することで感染する。さらに、気管挿管、気管⽀鏡検査、ネブライザー吸⼊、気道吸引、⼼肺蘇⽣など特定の医療⾏為によってエアロゾルが発生し、空気感染する可能性が指摘されている。  

B 潜伏期間と感染性  

  • 新型コロナウイルスに感染した場合の潜伏期間は、1~14日(中央値は 5.1)で,確定した患者のうち 97.5%が11.5日(8.2~15.6)以内に発症したと報告されている[1]。 
  • ウイルスの排出は、発症する 2〜3日前より始まり、発症直後に感染力が最も強く、発症後 8日で感染力は大幅に低下すると報告されている[2]。なお、発症後7日以降はPCR検査が陽性であっても、ウイルス培養では陰性であり活性は認められないとの報告がある[3]。 
  • 鼻咽頭には症候性患者と無症状感染者とでは同等のウイルス量が認められており、無症状であっても感染力があると示唆されている[4]。 
図表1 
中国での新型コロナウイルス感染症患者の各年齢の致死率 
 
図表2 
中国での新型コロナウイルス感染症患者の合併症の致死率 
 

C 症状  

  • 典型的な初発症状はないが、発熱、乾性咳嗽、頭痛、筋肉痛、悪心(嘔吐なし)が比較的多くみられる症状で、強い嗅覚・味覚障害、倦怠感、下痢、などを伴うこともある  
  • 一般的に呼吸困難を認める場合は、ウイルス性肺炎を発症しているものと推測されるが、発症平均8日後に出現することが多い[5]。しかし、CTなどで検出される自覚症状のない肺炎の存在も多数指摘されており、肺炎自体はより早期に生じている可能性がある。  
  • さらに、急性呼吸性窮迫症候群(ARDS)や敗血症性ショックなどを合併して多臓器不全に至ることがある。この場合、人工呼吸器や ECMO など高度医療へと移送しなければ、数時間で死亡する。  
  • 一方、すべての感染者が発症するわけでなく、無症状のまま推移する例も存在する。  

D 病原性  

  • 中国 CDC による確定患者 4万 4672例の臨床プロファイルによると、81%が軽症であったが、14%が重症化しており、5%が生命の危機に陥ったとしている。致命率は全体の2.3%と報告している[6]。とくに、50歳を超えると加齢とともに致命率が上昇する。  
  • 高齢者のほか、高血圧などの循環器疾患、糖尿病、喘息や COPDなどの呼吸器疾患、がん、各種免疫不全、人工透析などの基礎疾患があると重症になりやすい。妊婦が重症化しやすいとする報告はないが、胎児への影響が疑われており注意が必要である。 
  • 確定診断された小児(18歳以下)2,141例の臨床プロファイルによると、55%が無症状もしくは軽症であり、39%が肺炎を認める中等症とされ、5%が低酸素の所見を認める重症に至ったが、生命を脅かす臓器不全に陥ったのは 1%未満であったと報告している[7]。このうち死亡したのは、14歳男児の1例のみであった。 

2.流行期に求められる診療所の感染対策  

A 症状のある患者と他の動線と時間を分離する  

  • すべての医療機関は、新型コロナウイルスの感染者が受診する可能性を考えて、感染対策を実施することが求められる。 
  • 外来受診する患者と付き添いの家族等には、すべて入り口付近で検温するとともに、咳嗽などの呼吸器症状がないかを確認することが望ましい。そして、症状の有無にかかわらず、マスクの着用を求める。 
  • 症状のある患者を自家用車で待っていただくこともよい。 
  • 動線が分けられない場合は、症状のある患者を診療時間外に見るなど、症状のない患者と時間的に分離することも必要である。なお、どちらもできない場合は、できる医療機関を紹介する。 

B 症状のある患者を診察する際の留意

  • 新型コロナウイルス感染症に限らず、感染対策の基本となるのは標準予防策の徹底である。すべての患者の診療において手指衛生を徹底するとともに、流行期においては常にサージカルマスクを着用する。さらに、患者に呼吸器症状を認めるときはアイゴーグルを着用する。 
  • 呼吸器症状を認める患者にはマスクを着用させる必要があるが、布マスクを着用していれば、周囲に拡散させる飛沫の量と距離を大幅に減らすことが期待できる。このため、医療従事者はサージカルマスクを着用すべきであるが、患者が着用するマスクは布マスクでもよい。 
  • 外来でもあり得る、気管挿管、気管支鏡検査、ネブライザー吸入、気道吸引、心肺蘇生など、一時的に大量のエアロゾルが発生しやすい状況では、空気感染の可能性が否定できないためN95マスクを着用する。キャップは必要に応じて着用し、シューズカバーは脱ぐとき汚染の危険があり勧めない。 

C レントゲン撮影における留意点

  • 新型コロナウイルスに感染している可能性のある患者について、胸部レントゲンや胸部 CT を撮影した場合、部屋の広さと換気扇の効率にもよるが、30分から60分はエアロゾル感染のリスクがあると考えて、この間、次の患者には使用しないことが望ましい。 
  • 院内感染のリスクも考慮し、レントゲン撮影の適応については慎重に判断する。具体的には、呼吸数の増加や経皮的酸素飽和度の低下などウイルス性肺炎の存在が疑われるとき、高齢者や基礎疾患を有する者など重症化のリスクがあり、早期の肺炎診断が求められるときが考えられる。 
  • 病院などでは、換気しやすい場所で消毒しやすいポータブルのレントゲンを使うことも管理上有効である[10]。 

D 症状のある患者の診療後の環境消毒

  • 新型コロナウイルスは、エンベロープを有するためアルコールにより不活化できる。また、環境消毒には次亜塩素酸ナトリウム水溶液も用いることができるが、有効性を高めるために0.2%~0.5%の濃度が推奨される。この他、抗ウイルス作用のある消毒剤が含有しているクロスを用いることもできる。 
  • ただし、コロナウイルスに対してクロルヘキシジンは殺菌効果が低いとの指摘がある[11]。 
  • 患者が触れた部位および触れた可能性のある高頻度接触部位を消毒剤含有クロスで清拭する。聴診器や体温計、血圧計などの器材を用いた場合も清拭する。患者がトイレを使用した場合には、ドアノブ、便座、流しハンドルなどを清拭する。環境消毒を行うスタッフは、グローブ、サージカルマスク、ガウン、アイゴーグルを着用する。 
  • 疑われる患者の診療を行ったあとは、室内の換気を適切に行う。とくに咳嗽が続いていた患者の診療後やマスクを着用していなかった患者の診療後、鼻咽頭ぬぐいの検体採取などを行った場合には、換気する時間を長めに設ける必要がある。  
  • なお、濃厚接触者は医療者がサージカルマスクを着用せず、また患者がマスクを着用しなかった場合、該当するが、その取り扱いについては巻末にQ&A形式のリンクを置く。 

3.外来診療の実際

A 電話や情報通信機器を使った外来のながれ  

  • 外来診療では、発熱、咳、嗅覚・味覚異常などの症状がある疑わしい患者とそれ以外をできるだけ接することなく分けることが最重要で、このため、診察の申し込みは電話で受けるよう、院外に張り紙をしたり、ホームページでこれを周知する必要がある。 
  • 次に電話や情報通信機器による問診を十分行った上、手際よく診察を進める必要がある。  
  • 巻末の資料を使って問診やトリアージのながれを示す。 
図表3 
電話診療機器を用いた診療の手引き 
患者の臨床症状をまずは、確認し、①から⑨までの手順で行って下さい。  
①患者さんの基本情報、保険証番号、電話番号など聞く  
②電話のしゃべり方で重症肺炎かどうか検討をつけるする  
③接触者、家族で具合が悪い人がいるか、感染を受けやすい職種かどうか確認する  
④症状を確認する  
⑤本人の話や、家族の話、情報通信機器の動画などで、呼吸困難の有無、昨日より悪化しているか、良くなっているのか確認 しゃべり方で、状態はわかるものである  
⑥患者さんの手持ちの機器を使ってできるだけ状況を把握  
⑦自宅待機か、来院か、救急車を呼ぶかなどをトリアージ  
⑧重症の指標に注意する  
⑨要注意患者を見落とさない 
⑩重症度基準を確認する 図は The BMJ 誌の COVID-19:remote consultations を改変したもの。 

B 電話や情報通信機器を用いた診療の事務的取り扱い  

  1. 対面診療による受診歴のある患者だけでなく、受診歴のない患者等についても、医師が電話や情報通信機器を用いて診療し医薬品の処方を行うことができる。  
  2. 院外処方においては、ファクシミリ等で処方箋情報が薬局に送付される場合、保険医療機関は、電話等再診料に加え、処方箋料を算定できる。なお、処方箋の原本は当該薬局へ送付する。  
  3. 電話や情報通信機器を用いて診療を行った場合は、電話等再診料を算定できる。  
  4. 4月10日の事務連絡は、新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療機関の受診が困難になりつつあることに鑑みた、時限的・特例的な対応である。  
  5. オンライン診療に関する研修は、受講することが望ましいが、この事務連絡が有効な間は、受講していなくてもオンライン診療が可能である。但し、事務連絡廃止後は、研修を受講しなければ、オンライン診療は実施できない。なおオンライン診療料を算定する場合は地方厚生局に届け出が必要である  
  6. 過去に受診歴のない患者に対して診療を行う場合に限っては、他のケースと異なる。  
    • 診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は 7日間を上限とする。 
    • 麻薬、向精神薬に加え、特に安全管理が必要な医薬品の処方はしてはならない。  
図表4 
診療報酬の算定(診療所の場合) 
 
  • なお、保険証の確認は、電話で行う場合は被保険者証の写しや運転免許証など写真付きIDをFAXしてもらうか、被保険者証と写真付き ID を写真に撮ってメールしてもらうこと。支払いは後日、現金か、銀行振り込みや、クレジットカードその他の電子決済によって実施してもらう。 
  • なお、新型コロナウイルス感染症を疑う患者さんを診察した場合、院内トリアージ実施料(300点)が算定できる。疑い病名は COVID-19。届け出は必要なく再診でも算定できるので忘れずに。  

C COVID-19 の患者が直接来院したときのトリアージ  

  • できるだけ他の患者と接触しないように、いったん院外に出ていただく。 
  • 軽症であれば指定時間に再度来院していただくよう指示する。 
  • 肺炎などがあり、転送の必要な患者は、院内で隔離できる部屋がある場合、そこへ入れる。 
  • 換気できる部屋がよいが、不可能ならエアコンを切って換気扇を回す。(下図:院内隔離部屋)  
図表5 
院内隔離部屋 
 
  • 問診:
    • 院内であっても電話や SNS、透視装置のマイクなどの音声会話などで問診し接触を回避する。
  • 診察時:
    • できるだけ患者との距離を保つ(1~2m)。  
    • 風のながれ、向きまで意識して窓を開け、換気を徹底する。 
    • 医師や職員は風・空気の流れの上流に立つ。
  • 息づかいや咳の仕方などで新型コロナウイルス肺炎が疑われる場合:
    • ビニール袋をつけたパルスオキシメータで酸素飽和度を測定。バイタルチェックは、体温、血圧、脈拍に加え、呼吸数も確認。
  • レントゲン撮影:
    • 疑われる場合や心配な場合はできるだけ撮影をしておく。
    • 両側性かつ末梢中心の間質性肺炎像が特徴(再診時の比較でも役立つ)。
  • CT:
    • 全例への撮影は必要ないが、院内感染防止が担保でき、撮影できる場合は肺炎検出の感度が高いので撮影する。初期でも両側性や肺末梢に、スリガラス状の肺炎像などが見られる。 
    • 感染防御や消毒の注意はこちらを参照 https://jcr.or.jp/covid19_2020/
  • 血液検査:
    • 病院へ搬送する場合は必須ではないが、一度自宅へ帰す場合は測定しておく。  
    • 血算(リンパ球↓↓、血小板↓)、生化学検査(AST、ALT、LDH、CPKは↑のことも)、フェリチン↑、CRP↑は必ず検査する。敗血症のマーカーであるプロカルシトニンは上昇しない。

D 新型コロナによる肺炎が疑われる患者に対する診察と検査  

  • 外来医、看護師、事務職員に感染しないよう診療をしていくことが大切である。  
  • 次に、感染者の約 5%に生じる急性呼吸性窮迫症候群(ARDS)に至る前に、ウイルス性肺炎の発症を早期に見つけ、適切な医療機関に紹介することが重要。ウイルス性肺炎に特徴的な「息苦しさ」は、発症から1週間程度で出現する。  
  • 接触感染リスクを避けるため、なるべく聴診器を用いず、呼吸数の増加や経皮的酸素飽和度の低下でウイルス性肺炎の存在を推定する。疑うときは胸部レントゲン写真または胸部 CT を撮影する。両側の末梢側を中心とする多発性のすりガラス影が多く、索状影などを伴うこともある。一方、浸潤影や胸水は乏しいとされる。なお、腎障害を来しやすいため、造影剤を使用は避ける。 
  • 重症化の可能性を疑う場合には、PCR 検査を含めた対応ができる医療機関へと紹介する。紹介にあたっては、事前に医療機関に連絡をとり、受診方法を確認したうえで患者に伝える。 
  • インフルエンザやマイコプラズマの迅速検査はエアゾルが発生するため、N95 マスクレベルの PPEが無い場合は行わない。  
図表6
新型コロナ感染症流行時の咳、発熱患者の対応フロー 
 

E 重症化を疑う指標  

  • 下記が重症化を疑う指標である。 
図表7
重症化を疑う指標 

4.無症候感染者を視野に入れた外来や医療従事者の感染対策  

A 院内の整備と対策  

  • 受付のカウンター上に待合室と仕切る透明ビニールを垂らすかアクリルのパーティションを置く。  
  • 院内全域の換気を行い、エアコンはできるだけ切っておく(フィルターの汚染や空気撹拌防止)。   
  • 待合いの椅子を離して設置する。  
  • できるだけ物を片付け、消毒液を含むクロスや紙で拭きやすくしておく。  
  • 患者が触れやすい、ドアノブ、便座、流しハンドルなどは何もなくても定期的に清拭する。  

B 医療従事者の感染対策  

  • 基本はいつも標準予防策で (サージカルマスクの着用と手指消毒など)。
  • 新型コロナウイルス感染症の患者が来院し、とっさに PPE(Personal Protective Equipment)を着る場合に備え、その着脱に慣れておくこと。PPE は脱ぐときに自分や周囲を汚さないこと一番大切である。  
  • 外来レベルの PPE の着脱法 手順は図を参照。   
  • 動画で確認し、きちんとできているか他のスタッフに確認してもらうこと。  
  • 動画(日医HPから) http://www.med.or.jp/flv_movie/corona/chiiki02/index.html
図表8
PPEの着脱 
 

5.外来医の先生方にお願いしたいこと  

A かかりつけ医の先生方へのお願い  

  • 日頃診ている患者さんが感染しても重症化しないように準備しておくことも大切である。  
    1. 心疾患のコントロールを厳重に。  
    2. 糖尿病のコントロールもきちんと。  
    3. 慢性呼吸器疾患の治療を万全に。  
    4. 高血圧 薬を確認しコントロールをしっかりと。  
    5. 禁煙指導をしておく。  
    6. 鼻炎などこじれると熱や咳が出る病気は紛らわしくなるので、きちんと治療をしておく。  

B 普段から、かぜを含む呼吸器疾患の診療をしている先生方へのお願い  

  • かぜ症状の患者さんが全て、帰国者接触者外来や発熱外来などへ殺到すると、新型コロナウイルス感染症ではない方が、そこで感染し、感染者が増加して医療崩壊につながりかねない。  
    1. 普段かぜで診ておられる患者さんのかぜは、できるだけ自院で診ていただくことで、下記の鑑別表を参考に、トリアージをお願いいたします。  
    2. 少し怪しく、待てそうな場合は1日か2日自宅待機していただき経過観察していただくこと。  
  • このガイドはこの点を主眼に作ってある。該当箇所を確認いただきながら、是非ともお願いします。なお、ご高齢の先生方はハイリスクグループでもあり、無理は禁物である。 
図表9
COVID-19の鑑別疾患と鑑別に役立つ所見 
Kansas 州保健局から改変  
 

C 普段かぜ等の診療をしていない先生方へのお願い  

  • 精神科、皮膚科、眼科、整形外科、脳外科など、日常かぜの診療をされていない先生方も多くおられる。これらの先生方も医療需要が増したとき、応援をお願いすることは避けられない。そこで、  
    1. 今から新型コロナ感染症の特徴や病態などを確認していたき、万が一の場合は御協力を。
    2. 医師でなければできないことを、専門でなくても応援していただくこと。
  • 日本の医療は、薬の処方や処置など医師の指示がないとスタッフが動けない仕組みになっている。このため、新型コロナ感染症と直接闘っている先生方ができなくなった仕事を担っていただく医師がいないと、通常の医療も行えない。そこで、支援が必要になった場合はこれらの業務を中心に協力を願いたい。定期的に必要な処方や検査を order すること、安全な状況(電話ボックスタイプの箱からなど)でのPCR等検査の検体採取などが考えられる。地域の医師会や医療機関内でも、このような場合に備え、協力し合う仕組み作りを考えなければならない。   

6.役立つリンク集  

今回の外来診療ガイド作成にあたって以下の専門家の先生方から多くの寄稿をいただいた。他科の先生方にも参考になると考えられたため、web 版からリンクをはらせていただいた。編集者を代表して感謝を申し上げます。  

また、新型コロナウイルス診療に置いて興味深い記事や動画などのリンクを張ったので、ご覧いただければと思う。新しい寄稿や興味深い動画は今後ともどんどん追加をしていく予定である。  

  • 耳鼻咽喉科診療ガイド 日本耳鼻咽喉科学会 村上信五  
  • 眼科外来診療ガイド 日本眼科医会 白根雅子  
  • 整形外科外来におけるコロナ対策診療ガイド 日本整形外科学会(担当理事 伊藤淳二、委員長 池内昌彦) 
  • 整形外科外来診療ガイド  
  • 小児の重症化しないは注意。乳幼児は! 公益法人 日本小児科医会 副会長 伊藤隆一  
  • 濃厚接触者 Q & A  
  • PCR センター(ドライブスルー、電話ボックスなどの資料や動画、N95 の保存の仕方など)リンク

コラム1 :エアロゾルは無視できない  

飛沫感染と接触感染が主な感染経路だがこれだけでは説明できないのが、マイクロ飛沫やエアロゾルと呼ばれるウイルスを含むごく小さな水滴からの感染である。換気のできない部屋では3時間以上も空中に浮遊し、感染の原因となりうる。また、家具や医療機器の汚染の原因となり、エアコンでこれが拡散されると普通の飛沫では届かない距離にいるヒトに感染する可能性[8]がある。口からはき出されるエアロゾル[9]を下記動画(乱流ガス雲と呼吸器病原体の排出の潜在的な影響)で確認できる。

図表10
エアロゾルによる感染がエアコンの送風により起きた例 

コラム2:新型コロナウイルス感染症の咳動画  

新型コロナウイルス感染症の咳動画のリンクを下記に記した診察の参考にしてほしい。

コラム3:新型コロナウイルスの検査法  

ウイルス遺伝子検査: 

鼻腔・咽頭より検体を採取するため、飛沫を浴びたりマイクロ飛沫の吸入に注意が必要である。

適切な採取ができていない場合もあり、感度は CT に劣る。

陽性に出た場合、発生届けを保健所に届ける必要がある。

  • RT-PCR 法: 
    • 各地の衛生研究所で行われているウイルス遺伝子検査 検体処理の時間を含め5~6時間ほどかかる。
    • 3月6日より保険適応となり、一部民間検査会社で検査可能となった。
    • 新しいキットでは検査時間短縮が可能(検体処理法の改善など)。

抗体検査: 

感染既往などを確認する、IgG、IgMの血液検査

  • 迅速簡易検出法: 
    • イムノクロマト法になどより血中抗 SARS-CoV-2(COVID-19)抗体を検出。 6日後までの血清と発症 13日以降の血清のペア血清を調べる。検体採取が安全に行えるが、PCR 陰性の疑似例で経過観察中の場合以外、早期の確定診断には用いることは困難。  
    • あるキットでは以下の検出率[12]とされる。 
  • 陽性率: 
    • 発症 7~8日 
      • IgM 抗体検出率 10.0 %、IgG 抗体検出率 25.0 %
    • 発症 9~12日後  
      • IgM 抗体検出率 4.8 %、IgG 抗体検出率 52.4 %
    • 発症 13日後以降  
      • IgM 抗体検出率 59.4 %、IgG 抗体検出率 96.9 %      

コラム4 :治療薬の現状  

(1)ウイルスに対する抑制作用  

  • ロピナビル/リトナビル(カレトラ®)[13]  
    • 特徴:プロテアーゼ阻害薬/CYP3A によるロピナビルの代謝を競合的阻害し血中濃度を上げる HIV 治療薬。  
  • ファビピラビル(アビガン®)[14,15] 
    • 特徴:RNA ポリメラーゼ阻害薬新型インフルエンザ治療薬として備蓄されている。  
  • シクレソニド(オルベスコ®)[16] 
    • 特徴:喘息治療薬の吸入ステロイド  In vitro でロピナビルと同等あるいはそれ以上のウイルス増殖防止効果。  
  • リン酸クロロキン・ヒドロキシクロロキン(HCQ)[17] 
    • 特徴:マラリヤ治療薬  米 FDA は HCQ とアジスロマイシンの併用を承認。phagosome 内の pH を上昇させることや糖鎖付加を阻害することで,ウイルスの増殖を抑えることができ、抗ウイルス作用が期待される。  
  • レムデシビル[18] 
    • 特徴:RNA ポリメラーゼ阻害薬エボラ出血熱用に開発。  

(2)重症化(ARDS)の病態を軽減  

  • トシリズマブ  (アクテムラ)[19] 
    • 特徴:抗 IL-6 レセプター抗体の抗リウマチ薬で、重症肺炎、サイトカインストームへの効果に期待されている。  
  • ナファモスタット・カモスタット[20] 
    • 特徴:蛋白分解酵素阻害薬で急性膵炎や DIC の治療薬。  
    • コロナウイルスの S 蛋白がが宿主細胞の ACE2 受容体と結合し、細胞に取り込まれる際、S 蛋白を酵素で切断する必要があり、その酵素を阻害する。  
  • 低分子ヘパリン(Enoxaparin 、Nadroparin)[21]
    • 特徴:抗凝固剤  サイトカインストームなどで起きている DIC などの凝固亢進を抑え病状を軽減。  
    • 3)消炎鎮痛剤の選択:過敏症がない限り、アセトアミノフェンを用いるが、他剤も使用不可能ではない。  
図表11
新型コロナウイルス感染症の治療薬候補と作用 
図表12
新型コロナウイルス感染症の治療薬候補とその作用機序 

コラム5:PCR等、気道からの検体採取の注意

無理に診療所内で行う必要はない。できるだけ設備や装備の整った帰国者接触者外来や発熱外来等で行う。  

感染者又はその疑いのある人からの検体採取は飛沫感染、時にエアロゾル発生による感染リスクの危険が伴う、これを回避するために次の注意が必要である。 

  • 採取者:
    • 標準予防策に加え、顔面 (眼・鼻・口)を保護する  
    • 鼻咽頭ぬぐい液採取の場合は、サージカルマスク(アクリルボックス以外では N95 着用が望ましい。)とゴーグル/アイシールド/フェイスガードの組み合わせに、手袋、(長袖)ガウンを着用。N95 が入手でき、きちんと装着できれば、よりリスクは軽減する。  
  • 場所:
    • 他人のいない場所が望ましく、換気のよい環境で行う。  
    • 室外で行ってもよい。電話ボックス型の箱からなら、よりリスクは少ない。  
  • 風向きと立ち位置:
    • 被険者にマスクを着用させ風下に向いて立たせ(座らせ)採取者は被険者の後ろ又は横から検体を 採取する。この時には検体採取ができるよう、マスクをずらしてもらう  
  • スワブ:
    • 確実に鼻腔から咽頭まで差し込む。グルグルと数回回し粘膜をこすり取ってから抜去する  
  • 下気道分泌物を補足:
    • ウイルスの検出率を上げるために、採取直前に3回ほどビニール袋の中に 向かってセキをさせた後、採取するという工夫を状況に応じて行う。  

https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMvcm2010260?articleTools=true

ドキュメンタリー

ダイヤモンド・プリンセス号の経験

  • 神奈川県庁 医務監 中澤 よう子

COVID-19 が世界中に拡大し、国内でも感染者が増加し続けている中、2月のダイヤモンド・プリンセス号の事件は、既に遠い昔のように思われます。幸いにしてあの大クラスターから国内へのまん延は防止できましたが、精緻な検証は専門家にお任せするとして、実際に現場対応を行った立場から振り返ってみたいと思います。  

当時、中国の武漢から世界に感染が拡大した COVID-19 は、国内初の患者が 1月半ばに神奈川県で発生し感染拡大を懸念しました。しかし、実際にはその後の感染につながることはなかったので、では今後の対応の準備をしようと思った矢先に、ダイヤモンド・プリンセス号は来港しました。  

ダイヤモンド・プリンセス号は大型豪華客船で、横浜港に来港した際には多くの人がカメラを向ける美しい客船です。日本や中国などに寄港しながら、様々なイベントをゆったり満喫できるクルーズ旅行で有名で、ご存知の方も多いと思います。この中で、新型コロナウイルス感染症の集団感染が起きました。第一報は「香港で下船した乗船客の感染が確認され、現在、数名の体調不良者の PCR 検査を行っている。」ということで、陽性者が出た場合の対応の依頼がありました。この時点で、中国の感染拡大の状況、感染経路、クルーズ船という環境などから、医師であれば誰でも「感染者はもっと出るのではないか?」と想像するでしょう。  

その後の状況は詳しく報道された通り、毎日次々に増える何十人もの感染者を医療機関に搬送することになりました。人数もさることながら、搬送に困難を極めることになった理由として、基礎疾患を持った外国人の高齢者が多く乗船されており、クルーズ船から異国の言葉もわからぬ医療機関に搬送されねばならないという、気持ちの切り替えが難しい状況がありました。感染された方は本当にお気の毒で、搬送の際に家族はなるべく同じ病院、重症者や外国人はなるべく近隣の病院、と調整する中、急変する方や他の疾患の救急対応を迫られるなど、まさに毎日が臨機応変の連続でした。船外への感染拡大を招かなかった要因としては、市中への出口を一本としたこと、搬送状況を県庁の対策本部と船内外のチームがリアルタイムで情報共有し連動して取りこぼしを防止したことなどが考えられますが、各医療機関など関係者の皆様の御協力無くしては、無事に全ての搬送が行われなかったものと心より感謝申し上げます。  

一方で対応全般を通じての私見ですが、行政の弱点としては人事異動により、感染症対策のノウハウの蓄積が難しいことです。感染症の拡大を防ぐためには何と言っても先手必勝で、拡大規模の過小評価はより一層の拡大を招くということは絶対に忘れてはならないことです。このため、行政も含めて医師が過去の例から学んだことを蓄積し、有事には率先してリードしていく事が必要です。2009年の新型インフルエンザの対応等の過去の経験を活かし、地域医療の主役である医師会の先生方と我々など関係者や市民がタッグを組み、新型コロナウイルスとの闘いに一日も早く勝利することを切に願っております。  

図表13
図表14

編集者の言葉  

  • 1月下旬、そろそろ新型コロナの情報が出ているころと、英文誌のサイトを見たところ、国難が来る予感を覚え、情報収集と対策を考える毎日となった。得た情報を職員、薬局、医師会の先生方と共有している間に、全国で矢面に立って困っている先生方のために実戦的なガイドを作るよう、日医の羽鳥常任理事より指令をいただいた。感染者数と同様に、指数関数的に増える情報の処理に四苦八苦しながら、多忙な先生方が病気のイメージをつかめ、外来での対策に役にたつものを作るよう努めた。 今後も新しい情報を次々と追加していかなければならない。リンク先の動画も見ていただき、ガイドの理念が実現されることを願っている。日々対策に追われご多忙中の岡部、高山の両先生には、監修を通して感染症と向き合う、厳しくもひたむきな姿を拝見した。お礼を申し上げるとともに、引き続きご指導をたまわりますようよろしくお願い申し上げます。 
    •  鎌倉市医師会会長 山口 泰  

編集後記  

  • 感染症との戦いは、人類にとっては永遠である。「銃・病原菌・鉄―1万 3000年にわたる人類史の謎」の著者ジャレド・ダイアモンドや、COVID19 が社会にもたらす変革は不可逆であるとのべるユバル・ハラリのいうように、この困難な不明の点の多いコロナウイルスに立ち向かうために会員の理解に貢献出来ることを願う。  
  • 横倉会長の命を受けて、ごく短時間の間に、集中して執筆・監修頂いた高山先生、岡部先生、山口先生、医会学会の諸先生に感謝する。  
    • 日本医師会常任理事 羽鳥 裕 
[引用文献]
  1. Lauer SA, et al:Ann Intern Med. 2020 Mar 10.  
  2. He, X., Lau, E.H.Y., Wu, P. et al. Temporal dynamics in viral shedding and transmissibility of COVID-19. Nat Med (2020).  
  3. Wölfel, R., Corman, V.M., Guggemos, W. et al. Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019. Nature (2020).  
  4. Zou L, et al:N Engl J Med. 2020;382(12):1177-9. 
  5. Huang C, et al:Lancet. 2020;395(10223):497-506.  
  6. The Novel Coronavirus Pneumonia Emergency Response Epidemiology Team:China CDC Weekly. 2020;2(8):113-22.  
  7. Dong Y, Mo X, Hu Y, et al. Epidemiological characteristics of 2143 pediatric patients with 2019 coronavirus disease in China. Pediatrics. 2020; doi: 10.1542/peds.2020-0702  
  8. COVID-19 Outbreak Associated with Air Conditioning in Restaurant, Guangzhou, China, 2020 (CDC Research Letter)  
  9. Turbulent Gas Clouds and Respiratory Pathogen Emissions Potential Implications for Reducing Transmission of COVID-19 https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2763852?resultClick=1 Video. Gas Clouds Demonstrate Their Ability to Travel Great Distances  
  10. Portable chest X-ray in coronavirus disease-19 (COVID-19): A pictorial review 2020 Apr 8. doi: 10.1016/j.clinimag.2020.04.001  
  11. Kampf G, Todt D, Pfaender S, Steinmann E. Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents. J Hosp Infect. 2020 Mar;104(3):246-251.  
  12. 国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/9520-covid19-16.html  
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  16. 国立感染研 http://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31#case_reports  
  17. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.22.20040758v3.full.pdf (review article)  
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