日本医師会 COVID-19有識者会議
WHO, 情報

WHO アップデート 第八報

中谷 比呂樹慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事
COI:なし
注:この記事は、有識者個人の意見です。日本医師会または日本医師会COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

(2020年6月15日寄稿)

世界の感染は、新興国を中心に引き続き拡大しており、BRICsの中軸国であるロシア、ブラジル、インドの患者数急増が止まらない。これらの国を含めて、経済的な影響から行動制限を継続することができず、患者数は増加しているなかでの社会経済活動再開という状態に追い込まれている国が多く、一応の安定を保っている我が国も諸外国の動向に注意しながら、次への備えを急ぐべき時期に差しかかっている。今回は、軽症者・無症状者の収容施設の運営、COVID-19の死亡診断書の書き方、そしてCOVID-19下の子育てに関するWHO情報を紹介する。

1 宿泊施設等をCOVID-19軽症者の隔離施設に変更する際の基準と患者管理に関する暫定ガイダンス

(Repurposing facilities for isolation and management of mild COVID-19 cases)
 6月1日

COVID-19患者の80%は入院を要せず、自宅で自主隔離をする軽症患者ケアに関するガイダンスがWHO本部から既に公表されている。(Home care for patients with suspected novel coronavirus (COVID-19) infection presenting with mild symptoms and management of their contacts [interim guidance]. https://apps.who.int/iris/handle/10665/331133)

一方、自宅で安全で適切な療養ができない、あるいはハイリスクの同居人がいるといった本人の臨床症状以外を諸条件を抱える患者が存在する。また、入院を必要としないCOVID-19の軽症者の受け入れ先に、公的施設やホテルを隔離施設として利用する戦略は、限りある医療資源をより効率的に配分できることが証明されている。これらを踏まえて、既存の施設を隔離施設として活用するための最低基準を示すことを目的として本ガイドラインがWHO地域事務局により作成された。

本ガイダンスは「対象とする患者の範囲」「需要推計と収容数の検討」「施設の特定、選別および必須条件」「施設の目的外使用の一般原則」の四章構成である。

「対象とする患者範囲」については以下のように示している。

(1)軽症例の定義

熱、倦怠感、咳、食欲不振、筋肉痛、咽頭痛、息切れ、鼻詰まりや頭痛等のCOVID-19の一般的な症状に加え、まれに下痢、吐き気や嘔吐があること。逆に意識状態の変化、呼吸困難、低酸素血症や収縮期血圧が90mmHg未満などのショック兆候あるいは合併症を呈している場合は、医療施設で管理すべきとしている。

(2)対象とする患者の範囲

  • 軽症でリスクは低いが、基本的な療養と観察が必要な者
  • 軽症でリスクは低いが、以下のいずれかに該当するため、自宅隔離に適さない者
    1. ハイリスクの同居家族(高齢者、乳幼児、妊婦、免疫抑制下の患者)の存在
    2. 自宅隔離のための個室、トイレ等の生活空間の区分けができないか隔離されると日常生活が出来なくなるもの
    3. 医療施設が限られている辺境な地域に自宅がある
    4. 住む家がない
  • 入院加療中であるが、症状がない、あるいは最低限の症状だが、退院基準を満たさない者

「需要推計と収容数の検討」については、国、地方自治体単位でCOVID-19感染状況の疫学的予測、医療提供体制を逼迫させないための行政横断的な調整も念頭においた軽症例数の予測、関連するプライベートセクター等と協働しながら確保できる収容可能数の見積もりを出すこととしている。

「施設の特定、選別および必須条件」については、医療機関外の施設を用いる場合最低限の基準としては、広いスペースを確保して患者用ベッド、資材、生活用品、水などが確保され、患者の急増にも対応でき、個室か最低1メートル(できれば2メートル)の距離をもって収容できること、ゾーニングができること、交通アクセス・安全・通信環境が整っていることなどを示し、更に、具体例として体育館とホテルなどの宿泊施設を利用する場合について具備すべき条件をリストアップしている。

「施設の目的外使用の一般原則」では実施計画は、患者安全及び感染予防対策の最低要件を満たすべきとし、考慮すべき5つの重要項目として以下を示している。

  1. 「スペースの確保及び基本設備」として、患者のいる汚染区域、生活必需品の受け渡しができる清潔区域、PPEの着脱を行う準汚染区域など、機能と汚染状況に応じたゾーニング、緊急時の避難経路も含め、トイレ、休憩場所、使用する階段、エレベーターを患者とスタッフで分けること、プライバシーへの配慮、十分な消火器の配置などを挙げている。
  2. 「基本的資材と器具」として、寝具が準備されていること、診療・サポートスタッフが使用するPPEがあること、飲用水や流し台が常時使えること、基本的な医療用品、食事と栄養支援が整っていること、本やテレビなどのストレス軽減支援用品があることなどを挙げている。
  3. 「人的資源」として、業務手順書、組織図、当番表を作成する、勤務実態管理を行う、患者の状態観察ができるよう、医療従事者が勤務していること、運転手、調理人、警備員等に至るまで非医療スタッフが施設内感染しないよう、十分な情報とトレーニングが提供されていること、青年団体など既存のコミュニテーネットワークを活用し、補助的役割を担ってもらうことなどを挙げている。
  4. 「感染予防と管理」として、医療機器やランドリー、食器などが安全に管理され、患者に直接ケアをしない限りスタッフは患者の部屋に不必要に入らない、汚れたリネンは排泄物を取り除いた後に非透過性のバッグに入れる、患者自身が身の回りの環境衛生を保つよう働きかけるなど、すべてのスタッフが確実に感染予防策ができることを挙げている。
  5. 「情報、コミュニケーションおよび社会的関与」として、政府は国民との対話を通じて隔離施設の目的と機能を十分に説明し、国民の不安を緩和すること、地域の調整機関と施設間で、入所・退所数などの情報が密に交換されること、患者の治癒や不安軽減に施設スタッフの社会的関与が極めて重要であることなどを挙げている。

本文は以下からダウンロードできる。

2 技術ノート COVID-19に関する死亡診断書、ICD死因分類及び関連死亡報告

(Medical certification, ICD mortality coding, and reporting mortality associated with COVID-19)
 6月7日

COVID-19 による死亡を同一の基準によって報告することが極めて重要であるが、現場では混乱が生じているとして、この技術ノートが本部から発出された。 

まず、COVID-19死亡を以下のように定義する。

  • 他の死因が考えられないCOVID-19確定・疑い症例の死亡をCOVID-19 死とする。
  • がんなどCOVID-19が直接的な死因とは考えられない死亡の場合、COVID-19感染があれば、原病を増悪させた可能性があるので、別途記載するが、COVID-19死にはカウントしない。

その上で、COVID-19死亡の確定、COVID-19のコーディング、租死亡率の測定と報告の3章に分けて詳細な説明と記入例を提示している。 例えば、重症心疾患を有するものが、COVID-19による呼吸不全で死亡すれば、COVID-19死とカウントし、COVID-19感染者が、心筋梗塞による心不全で死亡した場合は、COVID-19死とはカウントしない。

本文は以下からダウンロードできる。

3 COVID-19下の子育て(COVID-19 Parenting)

 6月8日

COVID-19は、仕事、家庭、学校で今まで行われてきたことを変えざるを得ない状況を生み、家族、特に子供に大きなストレスとなっている。 このような環境下で、子育てをするための各般のヒントが、WHO、UNICEFら関係者によってつくられ、HP上に公開されている。

トピックとhttpは以下のとおりである。

  1. COVID-19 Parenting – Talking about COVID-19
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-talking-about-covid-19
  2. COVID-19 Parenting – When children misbehave
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-when-children-misbehave
  3. COVID-19 Parenting – Family budgeting in times of financial stress
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting—family-budgeting-in-times-of-financial-stress
  4. COVID-19 Parenting – Tips for parenting teens
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-teens
  5. COVID-19 Parenting – Family harmony at home
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-family-harmony-at-home
  6. COVID-19 Parenting – When we get angry
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-anger
  7. COVID-19 Parenting – One-on-one time
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-one-on-one-time
  8. COVID-19 Parenting – Parenting in crowded homes and communities
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-in-crowded-homes
  9. COVID-19 Parenting – Keeping children safe online
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-keeping-children-safe-online
  10. COVID-19 Parenting a new baby
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-a-new-baby
  11. COVID-19 Parenting – Keeping it positive
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-keeping-it-positive
  12. COVID-19 Parenting – Tips for children with disabilities
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-children-with-disabilities
  13. COVID-19 Parenting – Keep calm and manage stress
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-keep-calm-and-manage-stress
  14. COVID-19 Parenting – Learning through play
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting-learning-through-play
  15. COVID-19 Parenting – Structure up
    https://www.who.int/publications/m/item/covid-19-parenting—structure-up