日本医師会 COVID-19有識者会議
WHO, 情報

WHO アップデート 第13報

中谷 比呂樹慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事
COI:なし
注:この記事は、有識者個人の意見です。日本医師会または日本医師会COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

(2020年8月10日寄稿)

我が国では、毎日の新規感染者が1000人を超える状況が続いており、お盆休みで人の移動が多くなるなかで、どのような対応を行うか難しい局面に至っている。今回は、COVID-19の見通しに言及したテドロス事務局長のプレスリリースとWHOの5ケ月の対応状況報告に関するWHO本部情報を2件紹介したあと、WHO西太平洋地域事務局が作成した、COVID-19の意思決定のための指標に関するアドバイスを紹介する。これは、今後の対策を考える上で、我が国にとって大いに参考になると思われる。今回も、WHO西太平洋地域事務局所属の邦人職員の方々のご尽力を得たので記して感謝したい。 

1 WHO本部プレスリリース COVID-19緊急委員会ハイライト

(COVID-19 Emergency Committee highlights need for response efforts over long term)
 2020年8月1日

緊急委員会は、IHR(国際保健規則)に則り、PHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)の決定に関して、最終決定を行う事務局長に助言を与えることである。既にPHEICは1月31日に発出されているが定期的な見直しがされている。今回の7月31日に召集された委員会で、全会一致でPHEICが延長された。その際、テドロス事務局長は、COVID-19感染は引きつづき拡大しており、100年に1度と言えるほどの健康危機を惹起し、その影響は10年単位で続くとの見通しを表明している。

プレスリリースの全文は以下からダウンロードできる。

またテドロス事務局長のビデオクリップも以下から視聴できる。

2 WHO本部  COVID-19 戦略的対応・準備進捗状況報告2020年2月1日~6月30日

(COVID-19 Strategic Response and Preparedness Progress Report 1 February to 30 June 2020)  
 2020年8月3日

WHOはCOVID-19 戦略的対応・準備計画(COVID-19 Strategic Response and Preparedness Plan (SPRP) )を2020年2月3日に公表して以来、国際協力の強化、国レベルでの対応と準備強化、及び研究開発とイノベーションの推進を基軸として活動をしてきた。爾来、5ケ月が経過したので、進捗状況をレビューする本報告書が作成された。冒頭、20の具体的なWHOの貢献と国レベルの進捗を示す6つの指標の改善を報告したうえで3つの柱ごとに詳細が説明されている。最後に、この計画の実施には17億4千万ドルの予算を擁し、その約8割がぜい弱国支援に向かうはずであるが、実際資金が確保されているのは7億2千万ドルに過ぎず、必要額の半分にも達していないことによるリスクを指摘し、国際社会からの貢献を求める内容となっている。

全文は以下からダウンロードできる。

3 WHO西太平洋地域事務局 COVID-19の意思決定のための医療の対応能力とその利用状況をモニターするための指標

(Indicators to monitor health-care capacity and utilization for decision-making on COVID-19) 
 2020年8月7日

COVID-19の流行下で国が公衆衛生措置を緩和するにあたっては、感染症例の急増に医療体制がどこまで準備できているのか把握する必要がある。特に医療対応能力とその利用状況に関する情報が重要であり、日常的にデータの収集と分析が体系的に行われるべきである。これにより、国や地方自治体が、アウトブレイクを抑制及び封じ込める戦略を実施する際に求められる以下の4つの意思決定の判断材料を得ることができる。

  1. 流行段階の評価:COVID-19アウトブレイクの流行段階を評価して、感染伝播の抑制および封じ込め戦略の判断材料とする。
  2. 公衆衛生措置の強弱:医療が逼迫している度合いの分析に基づいて、公衆衛生措置の緩和または引き締めを決定する。
  3. 医療運用方針:医療の利用状況に基づいて、患者の紹介、資源の配分や転用に関する運用上の決定を行う。
  4. 対応能力と利用状況:病床、備品、医療従事者などの医療体制に係る資源の供給状況に関するデータに基づいて、COVID-19への政府等の投資の結果として、医療の対応能力と利用状況の増加を経時的に把握する。

本指針では、医療の対応能力とその利用状況をモニターするための11の主要指標(Core Indicators)と9つの望ましい指標(Desirable Indicators)が、指標の定義、データとなりうる情報源、収集頻度、どの意思決定に活用できるかがクロス表の形で分かりやすく提示されている。

11の主要指標としては、①COVID-19 感染者による病床占有率(またはCOVID-19専用病床占有率)、②COVID-19の感染者によるICU病床占有率(またはCOVID-19専用ICU病床占有率)、③COVID-19用隔離病床の占有率、④感染者の中での医療従事者の率、⑤COVID-19患者ICU看護師率、⑥2週間分の個人防護資材を有する施設率、⑦COVOD-19検査機能を持つ検査施設率、⑧検査結果所要時間、⑨濃厚接触者のindex case発症後4日以内隔離率、⑩施設内分娩率、⑪外来患者数である。なお、⑩と⑪は一般医療への悪影響の有無の指標として月一の頻度でのモニターが推奨されている。

9つの望ましい指標としては、①ICU病床占有率、②人工呼吸器使用率、③COVID-19入院患者総数、④COVID-19退院者総数、⑤訪問診療総数、⑥救急外来受診者総数、⑦COVID-19対応訓練済保健医療従事者数、⑧トリアージ機能を有する急性医療機関率、⑨隔離機能を有する急性医療機関率である。

主要な指標は、基本的に週1回常時モニターされるものとして推奨されており、さらに、可能であれば望ましいとされる指標も週1回ないし月1回収集する。しかし、指標データの収集頻度は、流行の段階により臨機応援に変更されねばならない。また、各指標にはそれぞれ限界と偏りがあるため、意思決定時にはすべての指標、あるはいくつかの指標を組み合わせて判断することが推奨される。

本指針では、モニタリングを強化あるいは新たに導入する際に考慮すべき具体的なアクションとして、

  • 入手可能なデータとその限界を特定
  • 既存の情報源を強化することで新規のデータシステムを構築
  • 既存のデジタルヘルス技術を特定し、データ収集や分析の促進に活用
  • 標準化されていない、または相互運用できないデータを組み合わせるための手順を確立
  • フィードバック、データの共有、調和、統合を調整するメカニズムの導入
  • ダッシュボードなどを通じた医療の対応能力と使用状況データを日常的に分析および普及するメカニズム確立

などを推奨している。

最後にこの要約者の責任で、クロス表の原表を大幅に単純化して以下に示す【図表】。

図表

全文は以下からダウンロードできる。