日本医師会 COVID-19有識者会議
WHO, 情報

WHO アップデート 第19報

中谷 比呂樹慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事
COI:なし
注:この記事は、有識者個人の意見です。日本医師会または日本医師会COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

(2020年10月19日寄稿)

南北アメリカとインドに加え、欧州でのCOVID-19感染拡大が継続している。併せて、今回のパンデミック対応の教訓から学んで、With Corona時代の持続可能な活動を模索する動きが加速している。その代表がWHO COVID-19対応特別執行理事会で、10月5日、6日の両日、バーチャルに開催された。今回の特別会合は、5月のWHO総会でCOVID-19対策決議が採択されてから4か月たち、北半球におけるインフルエンザとのダブル・パンデミックが恐れられる中で、種々行われるべきことが対応の軌道に乗っているかを確認することを大きな目的とするものであった。日本は現在、執行理事国ではないが、加盟国として傍聴した他、筆者は前執行理事会議長として参加した。今回はWHO特別執行理事会の資料を中心に紹介する。また、資料の紹介に加えて若干の説明を行ったが、それらは中谷の個人的見解に基づくものである。

1 WHOCOVID-19対応特別執行理事会

(WHO Executive Board:Special session on the COVID-19)
 2020年10月5日、6日

 

(1)第73回WHO総会第1号決議:COVID-19対応
(WHA73.1 the COVID-19 response)
 2020年5月19日

まず、5月の総会決議を確認しておく。第73回WHO総会は、5月18日、19日に完全バーチャルな様式で開催された。エピデミックが燃え広がる中で開催されたため、統治機構の維持に必要な執行理事(選出)国指定を含む事項の他、絞り込んだ議題となった。焦眉の課題であるCOVID-19対応に関しては、決議案が日本を含む多くの国から共同提案され、コンセンサスで採択されている。決議には加盟国が行うべきこと15項目、国際機関や関係者等が行うこと3項目、WHO事務局長が行うべき点11項目が含まれている。 

決議本文は以下から見ることが出来る。

 

(2)特別執行理事会資料:2020年第73回WHO総会第1号決議COVID-19対応の実施状況報告
(Update on implementation of resolution WHA73.1 (2020) on the COVID-19 response)
 2020年9月23日

テドロス事務局長は、行うべきと指摘された11項目についてA4版で11ページにわたる報告書を特別執行理事会に提出する他、自身とライアン危機管理担当次長が口頭で追加説明を行った後、質疑が行われた。そこでカバーされた項目は、決議に沿って

  1. 国連の人道的対応における保健分野のリーダーとして行動し続ける
  2. IHR活動の強化と継続
  3. IHRに関して加盟国を支援
  4. 各国の状況に応じた公衆衛生対応と保健システムをとおして必要なサービスを確保するための支援
  5. 正確な情報の提供と偽装医薬品対策に関する支援
  6. 感染源の探索
  7. WHO戦略的準備対応計画(Strategic Preparedness and Response Plan:SPRP)の資金状況、活動状況の定期報告
  8. ワクチン・治療薬、診断法などの開発と普及
  9. 迅速な医薬品承認を与える為の活動への資金振り向け
  10. 既存のメカニズムの活用を含め、公平で独立した包括的な検証の段階的な作業開始

である。ただし、決議事項の第十一は「2021年WHO総会へ報告すべし」という項目なので、今回の事務局長報告には含まれていない。

また、この報告書には多くのフットノートがつけられており、グローバルヘルスの様々なイニシアティブの興隆状況を見る資料としての価値もある。

事務局長報告書は以下から見ることが出来る。 

 

(3)特別執行理事会資料:パンデミックへの備えと対応のための独立パネル共同議長報告
(Update from the Co-Chairs of the Independent Panel for Pandemic Preparedness and Response)
 2020年9月21日

このパネル(略称:IPPR)は、第73回WHO総会第1号決議:COVID-19対応の事務局長への要請事項⑩「既存のメカニズムの活用を含め、公平で独立した包括的な検証の段階的な作業開始 」に基づいたものである。テドロスWHO事務局長によりプロセスが開始されたが、共同議長ヘレン・クラーク元ニュージーランド首相、サーリーフ元リベリア大統領の任命後、WHOと独立した事務局組織を設けて独立した作業を進めている。今回の短い報告書は、設立の経緯と11名のパネルメンバーの指名などの報告に加えて、

  1. WHOが所管するメカニズムの有効性
  2. IHRの機能と過去のIHRレビュー委員会勧告の実施状況
  3. 国連全体の取り組みへのWHOの貢献
  4. 今回のWHOの行動 

について検証して、来年のWHO総会に報告書を提出するとしている。

執行理事会に提出された共同議長報告書は以下から見ることが出来る。 

また、IPPRは独立したホームページを持っていて、各種情報にアクセスできる。

 

2 WHO葛西健西太平洋地域事務局長第71回地域委員会基調演説

(Keynote address by Dr Takeshi Kasai, WHO Regional Director for the Western Pacific, at the 71st Regional Committee for the Western Pacific)
 2020年10月6日

10月6日から9日に渡り、WHO西太平洋地域委員会が開催された。当該委員会は、域内加盟国及び地域の代表者により構成され、地域事務局としての最高意思決定機関である。冒頭、葛西地域事務局長がこれまでのCOVID-19の状況を振り返り、健康危機管理部長からの詳細な報告があった。

西太平洋地域はAsia Pacific Strategy for Emerging Diseases and Public Health Emergencies (APSED III)の枠組みを通じて、WHOと加盟国が共に15年に渡り、健康危機への対応準備を行ってきた。この枠組みはSARS(重症急性呼吸器症候群)、H1N1インフルエンザ等の感染症からの学びを基に築かれている。これにより、中国での新興感染症(COVID-19)発生の第一報があってから数週間で、域内諸国では感染症対応システムが発動され、継続的なリスク・アセスメントが開始されるという迅速な対応につながった。また、WHOは国際保健規則(2005)の枠組みに従って、WHOから加盟国への支援要請に応じたので、その実績が報告された。

続いて、WHOがそれぞれの国の実情に即した支援を行う様子の具体的な事例としてモンゴル、ラオス、ミクロネシア連邦からバーチャルで報告があった。

最後に、葛西地域事務局長は以下を強調している。COVID-19はこの100年の公衆衛生の歴史の中で最大の難問をつきつけ、我々のヘルスシステムだけでなく社会や経済のレジリエンスが試されている。このパンデミックにより、我々はヘルスシステムの脆弱な部分を早急に改善させるとともに、個人、プライベートセクター及び政府が健康を維持するためにそれぞれの役割と責任を担っていく必要がある。謙虚であること、思いやり、弱者への支援そして連帯といった価値観が、我々の行動の手引きとなることを期待したい。特に、この地域の特徴である連帯によるワクチンへの公平な分配が確実になされることが重要である。そして感染症に強い地域社会を構築することで、健康で持続可能な社会や経済を実現する「ニューノーマル」を創出する努力が必要であり、これにより最も安全で健康な地域の実現の一歩となることを期待している。

演説原稿は以下から見ることが出来る。

 

3 COVID-19関連症状後のリハビリテーション自己管理支援ツール

(Support for Rehabilitation Self-Management after COVID-19-Related Illness)
 2020年10月7日

このツールはリーフレットとして活用するもので、COVID-19による感染で重症化し入院していた成人向けに、基本的な運動と生活のアドバイスを非常にビジュアルな形で提供するものである。

カバーされている項目は以下のとおり:

  • 息切れの対処法
  • 退院後の運動
  • 発声障害の対処法
  • 嚥下の対処法
  • 集中力、 記憶力、思考力に支障がある場合の対処法
  • 日常生活活動の対処法
  • ストレスや気分の対処法

以下で全文を見ることができる。