5類移行後のデータはこちら
(2023年5月9日更新:第23版)
(2022年7月22日寄稿:初版)
注:この記事は、有識者個人の意見です。COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。
第8波は終息したものの、減少していた新規感染者数が増加しはじめた。北海道、東京、石川、福井、京都、沖縄などで明らかである。5類移行に伴い全数把握は行われず、今後は、定点となる医療機関からの情報によって感染動向を把握することになる。その他に、本欄で紹介している全国の「PCR実施件数に対する新規感染者数の比率」や、札幌市の下水サーベイランスの結果がよい指標となる(https://www.city.sapporo.jp/gesui/surveillance.html?fbclid=IwAR0tNDRQncoTkJ232l0OMX40Y-ZqwNlaExvvEEo8z_uNq29Cy7kdQxl92Vg#covid)。実際、これらのデータは感染者数の変化をよく反映し、最近は上昇が続いている。
本欄は、HER-SYSのデータを、厚生労働省公表の週別の年代・性別新規陽性者数 (https://covid19.mhlw.go.jp/)と総務省統計局の2020年国勢調査による年齢別人口(https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka.html)および2021年の人口推計(https://www.stat.go.jp/data/jinsui/index2.html#suikei)に基づいて、COVID-19の感染動向を整理してきた。すなわち人口10万人当たりの年代別・地域別新規感染者、入院治療等を要する感染者、死亡者数の経時的変化、都道府県比較などをグラフで表示した。なお新規死亡者数は累積死亡者数の差に基づいている(解析と図の作成は、大林千一自治医科大学客員教授による)。HER-SYSは、入力の煩雑さのためはなはだ不評だったが、感染の全体像を把握し、研究者がデータを加工するうえで極めて有用だった。
年代別・地域別新規陽性者数から見える課題
1.第8波における感染地域のシフト
第7波は西日本の感染者が多かった。しかし第8波は、当初、北海道を筆頭に東日本で感染者が増加した。その後、それまで感染者数が少なかった中四国と九州で感染者数が増加した。第8波の人口当たりの感染者数は、東京圏、京阪神地域、沖縄県で少ないものの、それ以外の地域ではほぼ平均化した。
2.確保病床利用率の推移
(「各都道府県の人口当たり確保病床数と確保病床使用率」を参照)
第5~8波においては、流行毎に感染者数も確保病床も異なっていた。しかし確保病床の利用率のピークは、いずれの流行でも約60%と一定である。病床利用率60%は医療崩壊寸前であり、医療逼迫状態を指標として、政府がコロナ対策を講じていることと一致する。あわせて人々の行動が抑制されると考えられる。
3.女性の感染率
第7波の特徴は20歳代、30歳代、40歳代、50歳代において男性よりも女性の感染率が高い点にあった(9月20日時点:20歳代 11.7 vs 12.5%、30歳代 10.8 vs 11.9%、40歳代 8.6 vs 9.6%、50歳代 6.7 vs 7.2%)。残念ながら9月末に全数調査が中止された後は、男女別の感染者が不明となった。
4.死亡者数の地域差
第7波(6月22日~10月18日)と第8波(10月19日~5月9日)における人口10万人当たりの累積死亡者数を比較すると、第7波では西日本が高かったが、第8波では当初、北海道・東北地方が高く、その後、西日本における死亡率が上昇した。第7波と第8波それぞれの累積死亡者数を比較すると、北海道、中四国、九州での増加が著しい。第7波での分析では、都道府県における累積死亡率は地域の高齢化率と相関していた。第8波においても、高齢化率および高齢者施設における集団感染との関係は、重要な視点である。
北海道・東北地方 10.3 vs 32.2(第7波 vs 第8波)
関東地方10.3 vs 18.7
中部地方 9.8 vs 20.7
近畿地方 13.6 vs 22.2
中国地方 11.2 vs 24.9
四国地方 16.5 vs 35.0
九州・沖縄地方 17.6 vs 27.1
昨年9月7日までの第7波における死亡者と新規陽性者の比を計算してみると、高知県と福島県はそれぞれ263.5と20.9と、約13倍の差があった。地域のワクチン接種率、新規陽性者数の把握、新型コロナウイルス感染による死亡者の定義、感染者の年代、基礎疾患、高齢者施設におけるクラスタ発生などについても分析しないと原因を推測することはできないが、試みに都道府県の高齢化率、高齢感染者の割合、人口当たりの病床数、医師数、看護師・准看護師数との相関をプロットしてみた。その結果、新規陽性者数に対する死亡者の比は、地域の高齢化率と正に相関し、1病床当たりの医師数や看護師数と負に相関することが明らかとなった。この傾向は、第8波でも認められる。なお、COVID-19に限らず、2020年の標準化死亡率でも同様である。それぞれの地域の事情を含めた詳細な分析が必要である。
都道府県比較
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新規陽性者数とPCR検査実施人数比
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第8波年代別週人口当たり新規陽性者数(0〜49歳)
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第8波年代別週人口当たり新規陽性者数(50歳以上)
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各都道府県の人口当たり療養状況別療養者数
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各都道府県の人口当たり入院者数・宿泊療養者数
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各都道府県の人口当たり確保病床数と確保病床使用率
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各都道府県の週人口当たり新規陽性者数
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各都道府県の人口当たり入院治療等を要する者の数
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各都道府県の人口当たり重症者数
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各都道府県の週人口当たり死亡者数
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