日本医師会 COVID-19有識者会議
WHO, 情報

WHO アップデート 第17報

中谷 比呂樹慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事
COI:なし
注:この記事は、有識者個人の意見です。日本医師会または日本医師会COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

(2020年9月14日寄稿)

今回はWHOがオリジナルソースではない情報も敢えて報告することとした。それは、WHOのCOVID-19対応に関する独立検証委員会の委員指名である。COVID-19の初期段階でのWHOの対応の遅れへの疑問・批判があるなかで開催されたWHO総会では、各国の意見調整がギリギリまで続き最終的にはCOVID-19対応決議がコンセンサスで採択された。今後は来年5月のWHO総会に向けて報告書作成プロセスが進んで行くことになっている。独立検証という名称ゆえに、情報はWHOサイトからはアクセスできず独自のアドレスを持って活動しているが、そのサイトは、通常の検索エンジンでは見つかり難いので紹介する。

1 パンデミック事前準備および対応独立検証委員会委員の指名

(Panelist Named To Join The Independent Panel for Pandemic Preparedness and Response :IPPR)
 2020年9月3日

表記独立検証委員会は、2020年5月に開催された第73回WHO総会(バーチャル)決議WHA73.1 COVID-19対応(COVID-19 Response)に盛り込まれたWHO事務局長への加盟国からの指示に基づくものである。即ち、決議第9条WHO事務局長への指示第10項において“速やかに、加盟国とも協議して、中立・独立・包括的な評価を開始すべきで、

  • (1)WHOが用いることが出来るメカニズム
  • (2)IHRの機能と運用状態
  • (3)WHOの国連システム全体への貢献
  • (4)COVID-19関連のWHOの活動 

を検証し、将来の大規模感染症へむけての準備と起こった際の対応強化(WHO健康危機管理事業の強化を含む)を目指す” を任務としている。

これを受けて、WHO事務局長は、元ニュージーランド首相・前UNDP総裁のヘレン・クラーク女史と元リベリア大統領エレン・ジョンソン・サーリーフ女史(ノーベル平和賞受賞者)を共同議長に依頼するとの記者発表を2020年7月9日に行った。その後は、委員会の中立性を確保する観点から、WHO事務局長は前面に立たず、共同議長が各国に呼び掛けて120名を超える推薦者の中から、地域・専門性バランスを考慮して以下の11名が指名された。共同議長2名を含め、13名の委員構成が固まったのである。残念ながら日本からの参加はない。9月3日に行われた記者発表では、第一回会合を9月中に行い、2021年1月の執行理事会に中間報告、5月の第74回WHO総会には報告書を提出するというイメージで検証を行うとしている。

[委員名]
  • Co-Chair:
    • Rt Hon. Helen Clark 、Former Prime Minister of New Zealand、Former Administrator of UNDP
    • Her Excellency, Ellen Johnson Sirleaf、Former President of Liberia、Nobel Peace Laureate 
  • Panelists:
    • Mauricio Cárdenas, Former Finance Minister of Colombia
    • Aya Chebbi, African Union Special Envoy on Youth
    • Mark Dybul, Former Head of The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria and of the U.S. President’s Emergency Plan for AIDS Relief
    • Joanne Liu、Former International President of MSF
    • Michel Kazatchkine, Former head of The Global Fund
    • Precious Matsoso、Former Director-General of Health、South Africa
    • David Miliband, CEO of the International Rescue Committee、UK
    • Thoraya Obaid, Former Executive Director of the United Nations Population Fund
    • Preeti Sudan, Former Secretary of Health of India
    • Ernesto Zedillo, Former President of Mexico
    • Zhong Nanshan、Professor, Medical Journal Editor、China 

関連の情報は以下から見ることが出来る。

2 COVID-19 下における感染予防と死体の安全な管理 暫定ガイダンス

(Infection prevention and control for the safe management of a dead body in the context of COVID-19)
 2020年9月4日

本指針は、3月24日に出されてガイダンスを更新した。医療関係者(解剖医を含む)、葬儀関係者、より広範な公衆衛生関係者が用いることを念頭につくられており、

  • ①死体収納袋の基準の更新
  • ②解剖中に用いる予防資材の明確化
  • ③解剖中の換気の更新
  • ④埋葬・火葬の追加ガイダンス 

が特徴である。

まず、前文で、感染症による死体は火葬するのが感染予防からは望ましいとされているが、予防効果に関するエビデンスは明らかでないとして、遺族感情、文化的・宗教的配慮と死者への敬意が重要であると指摘する。その上で、死体に接する者の安全と感染予防の必要性を指摘し、手指消毒、個人所用資材、消毒措置が確保されねばならないとしている。章立てとしては;

  1. 死体を病室から解剖室、葬儀場、火葬場、墓地へ移動させる際の死体のパッケージング
  2. 解剖を行う際の留意点 
    • 一般的な感染症による死亡例と同様な対応に加え、肺などにウイルスが残存している可能性を勘案してN95マスクの使用を含め十分な感染防護措置を講じ、エアロゾル対策も行う。十分な換気(1時間に最低6回)も行う。
  3. 葬儀場などへの助言 
    • 従業員は感染予防ギヤを着用し、家族は死体を見ることは出来るが、接することは禁止する(それに代わる代替措置を考える)。
  4. 環境の消毒
    • コロナウイルスは金属・ガラス・プラスティック表面では最長9日残るので、死体に触れた資材は、石鹸ないし消毒剤で消毒されるべき。
  5. 埋葬ないし火葬
    • 列席者は、極力最小限とし、60歳以上と基礎疾患を持った人の衛生管理には十分留意する。死者の遺品は完全に消毒あるいは洗濯をすれば使用可能として、詳細な手技を記載している。

全文は以下からダウンロードできる。

3 WHO プレス・リリース COVID-19対策ツール促進パートナーシップ支援評議会創設会合

(Coronavirus Global Response: Access to COVID-19 Tools-Accelerator Facilitation Council holds inaugural meeting)
 2020年9月10日

COVID-19対策ツール促進パートナーシップAccess to COVID-19 Tools-Accelerator(略称ACT- Accelerator)は、COVID-19対策に必要なワクチン、治療薬、診断薬を開発し大量生産することによって、対策ツールを世界に均等に行き渡らせるために、WHO,EU,フランスそしてGates財団が提唱したパートナーシップである。ワクチン、治療薬、診断薬それぞれに、対象としてツールがおぼろげながら見えてきたので、資金需要額の不足分350億ドルの積算根拠を示して募金を求める内容となっている。このプレス・リリースでテドロスWHO事務局長は、感染と経済状況悪化悪循環を断ち切るためにはこの投資が経済的にも合理的であることを強調し、EU大統領、南アフリカとルワンダの各大統領、ノルウェーの首相も支持を訴えた。また、国連アントニオ・グテーレス事務総長は9月30日に国連の場でハイレベル会合をすることを約している。なお、前回お伝えした。COVID-19世界ワクチンアクセス機構(COVAX: COVID-19 vaccine Global Access Facility)は、このACT-Acceleratorの傘下でワクチンの提供メカニズムと位置付けられている。

関係の資料は以下からダウンロードできる。