日本医師会 COVID-19有識者会議
WHO, 情報

WHO アップデート 第九報

中谷 比呂樹慶応義塾大学 特任教授WHO執行理事
COI:なし
注:この記事は、有識者個人の意見です。日本医師会または日本医師会COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

(2020年7月6日寄稿)

米国およびBRICsの中軸国であるロシア、ブラジル、インドの患者数急増が止まず世界の感染は拡大の一途を辿っている。一方、アジアや欧州では、感染が下火になったことから経済活動を徐々に開始しているが、クラスターの発生がおこっており、難しいかじ取りをしながら、次の感染爆発への備えを急ぐべき時期に差しかかっている。今回は、次の感染への備えとともに研究開発の進捗に関するWHO情報を紹介する。

1 暫定ガイダンス:病院対応準備・迅速チェックリスト

 – COVID-19パンデミック下の総合的保健サービス能力評価 –
(Rapid hospital readiness checklist: Interim Guidance – Harmonized health service capacity assessment in the context of the COVID-19 pandemic -)
 2020年6月25日

COVID-19の様々な感染状況(準備、感染期、回復期)における医療機関の対応能力の現状、拡大可能性などを迅速かつ正確に把握する必要がある。その為、以下の12の項目ごとに現状の評価を行い、必要に応じて容易に反復できるよう、エクセルシートで集計できる工夫がなされている。日本では、種々の行動制限の再導入に当たり、医療機関の対応能力が考慮すべき事項の重点項目になっているので、このような迅速に医療現場の状況を把握するツールは有用であると考えられる。

  1. 指揮命令・対応体制
  2. 調整と情報伝達
  3. サーベイランスと情報管理
  4. リスク・コミュニケーションと地域の関与
  5. 管理・財務・活動の継続
  6. 人的資源
  7. 対応拡大能力
  8. 必須活動の継続
  9. 患者管理
  10. 医療従事者への職場の健康管理、精神衛生サポート
  11. 迅速な診断
  12. 感染防御

本文およびエクセル形式でのチェックリストは以下からダウンロードできる。

2 世界経済フォーラム・WHO共催プレスブリーフィング:アジアにおけるCOVID-19(COVID-19 in Asia)

 2020年7月1日

葛西 健 WHO西太平洋地域事務局長は、プレスブリーフィングに登壇して、アジア地域の感染状況と今後のNew Normalの世界について見解を述べた。その他の演者は、Woochong Umアジア開発銀行(ADB)持続可能な開発と気候変動局長、Hyung Gyoun Byun, コリアテレコムAIビッグデータサービス部次長、Runa Khanバングラディッシュフレンドシップ創設者・事務局長であった。 

葛西氏の発言概要は次のとおり:

  • この感染症の流行から6か月が経ち、世界中で1000万人の感染者が確認され、そして50万人が命を失っており、いまだに、感染は世界のあらゆるところで拡大している。
  • 我々の地域の多くは、感染例の数は頭打ちか、減少している状況。いくつかの国は1か月新規感染が出ておらず、ほとんどの太平洋島嶼国は1例も感染例がでていない。
  • 西太平洋地域の感染者数が他の地域より少ないとはいえ、このパンデミックのもたらした家庭、社会、経済への影響は甚大で、そして誰もが今後のことが気がかりであり、疲弊している状況ではないか。
  • しかし安心は出来ない。この地域でウィルスの感染拡大が起きる可能性はまだまだあり、世界的につながっている今の世の中では、ウィルスがどこかで蔓延している限り、どの国も安全ではないことを忘れてはならない。
  • 我々は目の前にある状況に対応すると同時に、大規模市中感染に備えて国の隅々まで準備を整える必要があり、これを達成するには、以下のことが重要だと考える。
  • この地域の多くの国で取られている対応策は、早期発見・隔離そして治療、積極的なコンタクトトレーシング、そして世論の集結であり、これらが功を奏して今のところ大規模市中感染に至らずにいる。しかしこれらの対策はさらに全国的なものとし、強化されなければならない。
  • 各国は、重症の方々のケアのための十分なスペースと設備を整えた医療施設と、重症ではない方々への中間施設の準備をする必要がある。
  • 我々は、ケアホーム、密集したところや衛生環境が整っていない中で生活する社会的弱者が守られるシステムを、確実に準備しなければならない。
  • 同時に、予防接種や結核の治療、がん、糖尿病や心疾患といった基本的な保健サービスを再起動する必要もある。
  • さらに重要なことは、 我々は「ニューノーマル」を日常にしなければならない。このウィルスはヒトからヒトに感染することで生き続けるので、一人ひとりが自分の行動を通じて、自分自身、家族、友達、同僚、医療従事者そして社会的弱者と地域社会を守る力と責任がある。
  • この「ニューノーマル」は健康か生活か、どちらを優先するのかということではない。客観的なデータをもとに、保健セクター、経済セクターそして地域社会が話し合って、それぞれの実情に応じてどのようにニューノーマルを実行していくのかが決定されなければならない。
  • みんなでこれに取り組むことができれば、この疾病のみならず他の脅威からも自分たちを守ることができよう。健康は投資対象と認識され、人々は到達しうる最大限の健康を得ることができ、不公平が最小化された世界では、「ニューノーマル」は「新たな未来」となる。これは個々人にとってもよいことであり、さらに我々の経済および社会にとってもよい効果をもたらすのではないか。この「新たな未来」はCOVID-19から我々が学ぶ成果であり、WHOはその実現に向けて努力したい。
  • 我々は重要な局面にいる。我々はさらなる感染の急増に備えて用心し、備えると同時に、新しい未来に向けた道すじをつけていく時だからである。

動画は以下から視聴することができる。

3 COVID-19ワクチン・治療薬・診断薬開発・普及パートナーシップの資金需要見通し

(ACT-Accelerator Investment Case) 
 2020年6月26日

COVID-19ワクチン・治療薬・診断薬開発・普及パートナーシップは、2020年4月24日にEU、WHO、ゲーツ財団が主唱し、独・仏そして日本も参加するCOVID-19対策のツールとなるワクチン・治療薬・診断薬を開発し、低所得国・中所得国へのアクセス確保(普及)を目指す有志連合である。今回、2021年半ばまでに2億4500万人分の治療、5億人分の診断、2021年末までに20億人分のワクチンを確保するための資金需要を明らかにした。それぞれの内訳は、研究開発費のみならず、生産力拡大のための投資、製品購入料などが含まれ、それぞれ181億ドル、72億ドル、60億ドルの計313億ドルとなっている。当面確保されている資金は、それぞれの需要額の14、10、2%であり、279億ドルの資金不足を指摘している。なお、ワクチン20億人分の約半数は先進国・上位中所得国が自己資金で購入することを前提としている。 

詳細およびプレスリリースは以下からダウンロードできる。

WHOプレスリリース

これに関連して、日本など先進国はGAVi(ワクチンと予防接種のための世界同盟/The Global Alliance for Vaccines and Immunization)に新たに設けられたCOVID-19グローバル・ワクチンアクセス・ファシリティ(COVAX)を使い購入することが出来、6月4日には既にAstraZeneca社のワクチン3億人分が確保された旨GAViより各国に説明されている。その際用いられたスライドは以下よりダウンロードできる。