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新型コロナウイルスワクチンの副反応

著者

COI(利益相反)

注:この記事は、有識者個人の意見です。COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

  • 人々のワクチンの信頼を得るためには、ベネフィットの説明だけでなく副反応の説明が必須である。
  • いくつか注意すべき副反応があるが、mRNAワクチンをはじめとした新型コロナウイルスワクチンは高い安全性と有効性を持つ。
  • 頻度の高い副反応としては、発熱、倦怠感、頭痛、接種部位の腫脹等があるが、概ね忍容性が保たれている。
  • mRNAワクチンのまれな重篤な副反応としては、アナフィラキシー、心筋炎・心膜炎があげられる。
  • アデノベクターワクチンのまれな副反応としては、血小板減少症を伴う血栓症がある。
  • 被接種者にとって、ワクチン接種の際の医療従者からの適切なリスクコミュニケーションは重要である。
  • 接種ストレス関連反応が注目されている。

正確なリスクコミュニケーションが重要

ワクチンがパンデミックを制御する最大の武器であることは間違いない。この強力な武器によりパンデミックを克服するには高い接種率が必須だ。

接種率向上の障害であるワクチン忌避に打ち勝つには、被接種者の副反応への不安に対する適切な情報提供が必要である。単に有効性を強調するだけでなく、副反応の情報も含めた正しいベネフィット・リスクについてのリスクコミュニケーションがそのカギだ。信頼される医療従事者からの正確な情報提供の重要性は極めて高い。

ワクチンのベネフィット

本邦で接種されているものはmRNAワクチンのコミナティとスパイクバックス、アデノベクターワクチンのバキスゼブリアである。特にコミナティとスパイクバックスは各々95.0%(95% CI: 90.3-97.6)[1]、94.1%(95%CI 89.3-96.8) [2]と高い発症抑制効果がある。さらにイスラエルからの発症者についての報告[3]では、92%と高い重症化予防効果が示されている。このワクチンがいかに多くの人々を救っていることがわかるであろう。

頻度の高い副反応

頻度の高い副反応としては、発熱、倦怠感、頭痛、接種部位の腫脹等がある[4]。いわゆるモデルナアームと言われる遅延型の局所反応も特徴的だ(図)。インフルエンザワクチン等よりやや高度の全身反応・局所反応が認められるが、概ね忍容性が保たれている。

遅延型過敏反応
遅延性皮膚反応(モデルナ筋注1回目接種後)40歳代女性
出展:厚生労働省ホームページ 新型コロナワクチンの初回接種後の健康状況調査 健康観察日誌集計の中間報告(17)(令和3年12月3日)https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000862143.pdf

まれだが重篤な副反応

mRNAワクチンの重篤な副反応としては、アナフィラキシー、心筋炎・心膜炎があげられる。

アナフィラキシーは100万接種あたり5.0(コミナティ)、2.8(スパイクバックス)とまれな副反応である。ほとんどは女性の初回接種において、70%以上が15分以内に発現する。一過性であり、適切な対応により不良な転帰は回避可能である。本邦では厚労省の通知に従い、アナフィラキシーに対する対応の準備がなされている。

急性心筋炎・心膜炎は10-2,30代の男性に多く認められ、特に10代後半の男性では100万接種あたり25.5(コミナティ)及び98.7(スパイクバックス)の発現[5]を認めている。一方、女性や高齢者では極めてまれである。重症化する例はまれである。本邦では、10-20代の男性は比較的心筋炎の頻度が低いコミナティを選択可能である。

アデノベクターワクチンの副反応として留意すべきは血小板減少症を伴う血栓症である。接種後4-28日後に発症し、脳卒中、脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症、深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症等を疑う症状を示す。現時点で確立した治療法はなく、高用量IVIG、抗凝固剤、ステロイド等が試されている。本邦での報告は極めてまれである。

安全性評価

ワクチンの安全性は、承認時に加えて導入後も継続的に慎重かつ多元的に評価されている。薬事承認前は、通常の医師の自発的報告の収集に加えて、ワクチンでは患者日誌で積極的に局所反応等の軽度の副反応も調査される。数万人規模の第3相試験により、まれで重篤な副反応を承認前に収集している。導入後は、予防接種の副反応に特化した安全性サーベイランスシステムを構築することで迅速な副反応対策を整備している。

接種ストレス関連反応

新型コロナウイルスワクチンに特異的なものではないが、近年、接種の行為に対するストレス反応である接種ストレス関連反応ISRR[6]に注目が集まっている。ストレス反応として観察される多様な症状・徴候スペクトラムを含む包括的概念であり、接種前・接種時・接種後に様々な要因で起こりうる。被接種者の不安に配慮したコミュニケーションが予防に重要とされている。ISRRが発生した際には、何より穏やかかつ冷静に被接種者・保護者とコミュニケーションをとり、患者や周囲の人を安心させることが重要である。機能障害軽減にフォーカスした専門の医療機関でのフォローが望まれる。

[引用文献]
  1. Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine. Fernado P Polack et al. N Engl J Med. 2020 Dec 31;383(27):2603-2615.
  2. Efficacy and Safety of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine. Lindsey R Baden et al. N Engl J Med. 2021 Feb 4;384(5):403-416.
  3. Effectiveness of a third dose of the BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine for preventing severe outcomes in Israel: an observational study. Naom Barda et al. Lancet 2021; 398(10316): 2093-2100.
  4. 新型コロナワクチンの初回接種後の健康状況調査. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_kenkoujoukyoutyousa.html
  5. 新型コロナワクチンQ&A. 厚生労働省. https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0079.html#honbun
  6. Immunization stress-related responses. A manual for program managers and health professionals to prevent, identify and respond to stress-related responses following immunization. World health Organization. 2019, ISBN 978-92-4-151594-8.

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