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新型コロナワクチンの有効性と安全性の考察

著者

COI

注:この記事は、有識者個人の意見です。COVID-19有識者会議の見解ではないことに留意ください。

  • 新型コロナウイルスに対するワクチン接種は世界200カ国・地域で始まっており、33カ国・地域で人口100人あたりの累計接種回数が100回を、71カ国・地域で50回を上回っている。
  • ファイザー社、及びモデルナ社のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは、SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)に対し、高い有効性が報告されている。
  • 千葉大学病院コロナワクチンセンターで行われた教職員を対象にした研究により、日本人においてもファイザー社ワクチンの接種によりほぼ全員に抗体価の上昇が認められることが判明した。
  • 比較的多く認められる副反応は、接種部位の疼痛、倦怠感、頭痛、筋肉痛、悪寒、発熱、関節痛であり、接種翌日に最も頻度が高い。若年者・女性で頻度が高く、1回目に比して2回目のワクチン接種後に副反応は強い。
  • まれに認められる副反応として、アナフィラキシー、血栓症(アストラゼネカ社ワクチン)、心筋炎・心膜炎(ファイザー社ワクチン、及びモデルナ社ワクチン)が報告されている。
  • 12歳以上のすべての年齢相においてワクチンの接種は、利益がリスクを上回ると考えられる。

 

新型コロナウイルスワクチン接種の現状

本邦で接種が進む新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンはファイザー社、及びモデルナ社のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンであり、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のmRNAを脂質膜で包んだ製剤である。mRNAを基に細胞内でSARS-CoV-2のスパイクタンパク質が産生され、液性免疫(抗体産生)と細胞性免疫が誘導される。

アストラゼネカ社のワクチンはチンパンジーのアデノウイルスをベクターとして使用したワクチンであり、同じくSARS-CoV-2のスパイクタンパク質が産生される。

新型コロナウイルスに対するワクチン接種は世界200カ国・地域で始まっており、33カ国・地域で人口100人あたりの累計接種回数が100回を、71カ国・地域で50回を上回っている(7月20日時点)。

本邦における新型コロナワクチンの累計接種回数は7月20日時点で7200万回を超え、4350万人(人口の約34%)が少なくとも一回の接種をうけた。

新型コロナウイルスワクチンの有効性

ファイザー社、及びモデルナ社のmRNAワクチンは、SARS-CoV-2による感染症(COVID-19)に対し、いずれも約95%と高い発症予防効果が報告されている。

アストラゼネカ社のワクチンの発症予防効果は76%と報告されている。

ファイザー社、及びモデルナ社のワクチンは、ベータ株やデルタ株などの変異株に対しても依然として有効性が示されている。

ワクチン効果の持続期間に関する情報は乏しいが、ファイザー社のワクチンに関しては接種半年後においても90%の発症予防効果があったと発表されている。

千葉大学病院コロナワクチンセンターにおける研究成果

千葉大学病院コロナワクチンセンターで行われた教職員約2000名を対象とした研究により、以下のことが明らかとなった[1]。

  • ワクチン接種前に新型コロナウイルスのスパイク蛋白に対する抗体が検出された人は21人(1.1%)であり、その抗体価の中央値は35.9U/mLであった。21人中18人が陽性(0.8U/mL以上)と判定され、その内8人にCOVID-19の既往があった。
  • ファイザー社のワクチンを2回接種した後に検体を採取できた1774人中1773人(99.9%)で抗体価が陽性となった【図1】。ワクチン接種後の抗体価の中央値は2060U/mLであり、新型コロナウイルス既感染者のワクチン接種前の値に比して50倍以上高かった。
  • 男女問わず年齢が上がるにつれて抗体価上昇の程度が減弱した【図2】。また、いずれの年齢層においても男性より女性の方が抗体価は高かった。29才以下の女性(2340U/mL(中央値))と60代の男性(1270 U/mL)では、2倍近い差があった。
  • 多変量解析により抗体価の上昇と正に相関する因子として、①新型コロナウイルスの感染歴、②1回目と2回目の接種間隔、③抗アレルギー薬の服薬が抽出された【図3】。一方、抗体価の上昇と負に相関する因子として、①免疫抑制薬や副腎皮質ステロイドの服薬、②飲酒頻度が抽出された【図3】。
  • 新型コロナウイルス既感染者(接種前の抗体価が検出感度以上)では、ワクチン接種後の抗体価が12500U/mL(中央値)と著明に高く、新型コロナウイルスに対する免疫記憶が成立していることが示された。
  • ファイザー社のワクチンでは接種間隔は通常21日だが、それより短い間隔で接種した人(18日-20日)と長い間隔で接種した人(22日-25日)を比較すると、接種間隔が長い方が抗体価は高かった(1480U/mLと2345U/mL(中央値))。
  • 抗アレルギー薬を内服している人(2230U/mL(中央値))は、していない人(2060U/mL(中央値))と比べて抗体価が高かった。花粉症に対して抗ヒスタミン薬を服用していた人が多いと想像されるがその詳細は不明である。
  • 免疫抑制薬を服用している人の抗体価は146U/mL(中央値)、副腎皮質ステロイドを内服している人の抗体価は1300/mL(中央値)と低値であったが、新型コロナウイルス既感染者のワクチン接種前の値よりは明らかに高く、一定のワクチン効果は期待できると考えられる。
  • 飲酒頻度が高い人は抗体価が低かった(飲酒なし2110U/mL、毎日飲酒1720U/mL(中央値))。
  • 高血圧、肥満、脂質異常症、甲状腺疾患、糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎と抗体価との相関は検出されなかった。
  • 降圧薬、高脂血症治療薬、抗甲状腺薬、糖尿病治療薬、吸入ステロイド薬の服薬と抗体価との相関は検出されなかった。

ワクチン接種後の抗体価上昇と正に相関する免疫学的な特徴として、接種前のナイーブB細胞比率と、接種後の活性化CD8陽性T細胞比率が検出された[2]。

図1
ワクチン接種前後における抗SARS-CoV-2S抗体価の分布
ワクチン接種前はほとんどの被検者で抗体価は陰性であり、接種後はほとんどの被検者で陽性(中央値 2060U/mL)となった。
https://doi.org/10.1101/2021.06.01.21258188 (2021)

 

図2
性別及び年齢別のワクチン接種後の抗体価の分布
年齢が高いほど抗体価は低い傾向があり、いずれの年齢においても女性で抗体価が高かった。
https://doi.org/10.1101/2021.06.01.21258188 (2021)

 

図3
ワクチン接種後の抗体価上昇と関連する因子
多変量解析によりワクチン接種後の抗体価と関連する因子を抽出した。
https://doi.org/10.1101/2021.06.01.21258188 (2021)

 

新型コロナウイルスワクチンの高頻度な副反応

予防接種後副反応報告システム(V-safe Active Surveillance System)を用いて調査した米国の報告によると、副反応は接種翌日に最も多く、1回目の接種では、接種部位の疼痛64%、倦怠感29%、頭痛24%、筋肉痛17%、悪寒7%、発熱7%であり、2回目の接種では、接種部位の疼痛67%、倦怠感48%、頭痛40%、筋肉痛37%、悪寒23%、発熱22%、関節痛20%であった。65歳以上と65歳未満を比較すると、いずれの副反応の発生頻度も65歳以上で低かった[3]。

本邦で先行接種した医療従事者の調査においても同様に、1回目の接種に比して2回目の接種後で副反応が強く、発熱に関しては3.3%(1回目)から38.1%(2回目)と10倍上昇した。発熱は接種翌日に多く、多くは3日目に解熱した。副反応の出現頻度は年齢、及び性別により異なり、若年者・女性で高頻度であった[4]。

千葉大学病院コロナワクチンセンターで接種した教職員の調査においても同様に、1回目の接種に比して2回目の接種後で副反応が強く、特に疲労感、頭痛、関節痛、寒気、発熱でその傾向が顕著であった。

 

新型コロナウイルスワクチンのまれな副反応

アナフィラキシー

ファイザー社とモデルナ社のワクチンに対するアナフィラキシーは欧米では100万回接種あたりそれぞれ4.7件、2.5件と報告された。本邦では100万回接種あたり7件と報告されており、女性に多く、そのほとんどは1回目の接種時に発生している。

1回目の接種時にアナフィラキシーを発症した場合は、2回目の接種前に専門医の評価を受けることが推奨される。

一部の事例では、ワクチンに含まれるポリエチレングリコール(PEG)へのアレルギーが証明されているが、PEG化されたナノ粒子には反応するが、PEGのみには反応しない事例も報告されており、原因の同定はしばしば困難である。

ワクチン接種の数時間〜数日後に発症する蕁麻疹や軽度の血管性浮腫は、IgE非介在性のマスト細胞脱顆粒が関与するとされており、多くの場合、抗ヒスタミン薬の服用下で2回目のワクチン接種が可能である[5]。

血栓症

欧州医薬品庁(EMA)は、アストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンの接種を受けた2,500万人のうち86人に血栓症が発症し、18人が死亡したと報告した。若い女性で発症しやすいことも示された。

ヘパリン起因性血小板減少症と類似した病態と考えられ、その特徴は、①ワクチン接種4-28日後に発症する、②脳静脈血栓症、内臓静脈血栓症など通常の血栓症とは異なる部位に血栓が生じる、③中等度〜重度の血小板減少がみられる、④D-ダイマーの著増など凝固線溶系マーカーの異常を伴う、⑤抗血小板第4因子抗体が検出される、と報告された。

ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンでは、関連性があると評価された血栓症の事例は確認されていない。

心筋炎・心外膜炎

米疾病対策センター(CDC)は、mRNA型ワクチン接種後に心筋炎・心膜炎を発症した事例が、ワクチン有害事象報告システムに1000件以上報告されたと発表した。

心筋炎・心膜炎は、ワクチン接種1-5日後に急な胸痛でする。30歳以下の男性に多く、2回目の接種後に多いことから、その発症に免疫機構の介在が推測されるが、mRNAワクチンに対する如何なる免疫応答が心筋炎・心膜炎の発症につながるのかは不明である。

心筋炎・心膜炎は、新型コロナウイルス感染症の合併症としても報告されており、スパイク蛋白に対する免疫応答が関与している可能性もある。

発症頻度が高い18歳から24歳の若年男性においても、1回目のワクチン接種後で100万回あたり8.7人、2回目の接種後で100万回あたり56.3人とその発症はまれである。若年男性では過去のデータから予測される心筋炎・心膜炎の発生頻度より多く発生しており、ワクチン接種と心筋炎・心膜炎の因果関係が推測される。

イスラエルからも同様に、1回目接種者約540万人のうち27人が、2回目接種者約500万人のうち121人が心筋炎・心膜炎を発症したと報告された。16歳-30歳の男性に多く、95%の事例が軽症であった。

ワクチン接種後の心筋炎・心膜炎は極めてまれであり、また、その予後は良好なことから、CDCはリスク・ベネフィットを考慮し12歳以上のワクチン接種を引き続き推奨するとの声明を出した。

ワクチン接種後の心筋炎・心膜炎を含む安全性に関する最新情報は、CDCのウェブサイトにまとめられている[6]。

抗体依存性感染増強

ワクチン接種により、SARS-CoV-2感染時に抗体依存性感染増強(ADE)が起こることが懸念されている[7]。

ADEは、抗体を介してFcγ受容体を発現するマクロファージなどの食細胞にウイルスが取り込まれた結果、感染および複製の増強により重症化する現象であり、デング熱や猫コロナウイルス感染で確認されている。

中和能が不充分な抗体の産生、或いは不十分な抗体価の上昇が食細胞へのウイルスの侵入を促進し、疾患の転帰を悪化させることが推測される。

ウイルス感染後に産生される一部の抗体が、Fcγ受容体非依存的にウイルス感染を増強する可能性があることも最近報告された[8]。

一方、ファイザー社、或いはモデルナ社のワクチンでは中和作用のある抗体が十分に産生され、Th1細胞活性化も誘導されるため、ADEが起こる可能性は極めて低いと考えられる。実際にこれらのワクチンは、感染防御だけでなく、重症化防止にも有効であることが証明されている。

ワクチンにより誘導される抗体が結合しにくい新規変異株の出現や、経年的な抗体価低下への懸念は残るが、ADEによるデメリットがワクチンのメリットを上回る可能性はどの段階においても極めて低いと考えられる。

その他のまれな副反応

亜急性甲状腺炎、顔面神経麻痺、急性横断性脊髄炎、ギランバレー症候群、ネフローゼ症候群、横紋筋融解症、帯状疱疹、スティーブンス・ジョンソン症候群などがワクチン接種に伴い発症したとの報告があり注意を要するが、報告数が少ないため因果関係は不明である。今後のさらなる研究が望まれる。

12歳-15歳に対するワクチン接種

ファイザー社のワクチンは12歳-15歳においても高い有効性が示されている。免疫原性も16歳-25歳の集団と比較して同等であることが確認されている。

若年者は中高年者に比してワクチン接種に伴う発熱、倦怠感などの副反応が強く、血栓症、心筋炎・心膜炎の頻度も高い。そのためワクチンの恩恵は中高年者に比して相対的に少ない。

若年者では新型コロナウイルスに感染しても無症状・軽症で済むことが多いが、まれに多系統炎症性症候群(MIS)を発症することが知られている。MISは、様々な臓器に合併症を引き起し、死亡例も報告されている。MISはヒスパニック系やアフリカ系の若年者で発症しやすいとされるが、日本人においても報告されている。

若年者へのワクチン接種を推進することにより、新型コロナウイルスに対する集団免疫が強化され、地域社会での感染が減り、新規の変異株の発生や流行を防げる可能性が高まる。

以上より、思春期および若年成人への新型コロナワクチンの接種は、利益がリスクを上回ると考えられる[6]。

[引用文献]
  1. Kageyama, T. et al. Antibody responses to BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in 2,015 healthcare workers in a single tertiary referral hospital in Japan. Preprint at medRxiv https://doi.org/10.1101/2021.06.01.21258188 (2021).
  2. Kageyama, T. et al. Immunological features that determine the strength of antibody responses to BNT162b2 mRNA vaccine against SARS-CoV-2. Preprint at bioRxiv https://doi.org/10.1101/2021.06.21.449182 (2021).
  3. Chapin-Bardales J, Gee J, Myers T. Reactogenicity Following Receipt of mRNA-Based COVID-19 Vaccines. JAMA. 2021;325(21):2201-2202.
  4. https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000759518.pdf
  5. Banerji, A. et al. mRNA Vaccines to Prevent COVID-19 Disease and Reported Allergic Reactions: Current Evidence and Suggested Approach. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Apr;9(4):1423-1437.
  6. https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/slides-2021-06.html
  7. Lee WS, Wheatley AK, Kent SJ, DeKosky BJ. Antibody-dependent enhancement and SARS-CoV-2 vaccines and therapies. Nat Microbiol. 2020;5(10):1185-1191.
  8. Liu, Y. et al. An infectivity-enhancing site on the SARS-CoV-2 spike protein targeted by antibodies. Cell. 2021;184:3452-3466.e18.

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